内容説明
二十世紀前半のイギリスを代表する詩人の一人であり物語作家でもある著者の『子どものための物語集』から五編を選びました。奇妙な筋書きと細やかな風景描写、そこに姿を現わす不思議な存在の数々…。風土や風俗習慣、さまざまな伝承をふまえながら独特な世界を編みあげた、香気ゆたかなお話集です。小学校上級以上。
著者等紹介
メア,W.デ・ラ[メア,W.デラ][Mare,Walter de la]
1873年、英国ケント州チャールトンに、教会の管理人の息子として生まれ、のちに一家でロンドンに移る。石油会社の帳簿係として働きながら文学の勉強をし、作品を発表するようになった。多くの詩、物語、評論を残して1956年没。『九つの銅貨』の母体である『子どものための物語集』で英国の権威ある児童文学賞、カーネギー賞を受けた
脇明子[ワキアキコ]
1948年、香川県に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科卒業。岡山県在住
清水義博[シミズヨシヒロ]
1935年、長野県に生まれる。小県蚕業高校卒業後、農業のかたわら山本鼎の農民美術を学び、彫刻・版画の制作に従事する。長野県農民美術連合会会長。長野県上田市在住
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
235
著者デ・ラ・メアの短編作品から5作品を選んで編まれた1冊。『チーズのお日さま(”The Dutch Cheese")』『ウォリックシャーの眠り小僧(”The Three Sleeping Boys of Warwickshire")』『ルーシー(”Lucy")』『九つの銅貨(”A Penny a Day")』『魚の王さま(”The Lord Fish")』の5つ。この中で『ルーシー』と『魚の王さま』は『デ・ラ・メア物語集』に収録されている。『2017/03/31
KAZOO
147
わたしはデ・ラ・メアというと「恐怖小説」の類を思い出してしまいます。このような子供向けの作品集があるとは思っていませんでした。読んでみると結構幻想的な感じをうまく醸し出している感じがします。5つの短編集ですがもう少しほかの作品も読んでみたくなりました。2017/05/21
さゆ
36
図書館の児童室の書架に、こんな本がひっそりと殆ど誰にも読まれることなく佇んでいたなんて!読んでいて既視感があり、しばらくして思い当った。そうだ!小川洋子さんの書くものに雰囲気が似ているんだと。よくある昔話かと思うと、いつの間にか、初めての世界感へ、そしてまた戻る、というような感じでしょうか。脇さんの訳もその世界感をこわさないような包み込むような訳で素敵だし、挿絵の清水さんの版画も素敵。装丁も素敵。福音館は、本を大事に思っているんだなと解る。「子どもにもわかる」というよりは大人に是非読んでもらいたい一冊。2012/02/21
小夜風
28
【図書館】子どもたちにも楽しめる幻想的なファンタジー。設定が妖精や小人だからおとぎ話みたいですが、よくよく考えるとどのお話も凄いホラーっぽくて、読んでいて「え?怖い」「何これ!」と何度もゾッとさせられました。そして読み終わっても「何だったんだろう」って心に引っ掛かるような……。エイキンさんのようにキラキラしている訳でもなく、冷たい霧の中を歩くような印象の本でした。2015/12/05
あたびー
26
#日本怪奇幻想読者クラブ 児童書ではあるが、大人になってからもまた手に取ってもらいたい本。おそらく主に19世紀英国の田舎を舞台に妖精や魔法を題材にしながら、そうしたものと密接につながりを持ちながら暮らす人の心を描いている。文章はあくまで語り掛けるように、驕らず、大袈裟に走らず、綴られて行く。清水義博氏の素朴で小さな木版画が、イメージを押し付けることなく読者を物語の世界にそっと押しやってくれる。以下覚書2020/05/13




