出版社内容情報
昨日のことのように鮮やかに浮かび上がる幼時の記憶の断片。明治末年の生活を幼い心に映じたままに再現した自伝文学。(N-2)
<読んであげるなら>---
<自分で読むなら>小学高学年から
内容説明
「古希」七十歳に近づいたころ、著者の心の中に、忘れ去って久しい幼い日々の記憶が、まるで魔法のように蘇りはじめました。それもまるで昨日のことのように、ひとつひとつ鮮やかに…!「失われた時」を、幼児の目と心に映ったまま輪郭もくっきりと再現した、たぐいまれな自伝・回想記。小学校上級以上。
目次
早い記憶
身近な人びと
四季折々
近所かいわい
明治の終り
一年生
著者等紹介
石井桃子[イシイモモコ]
1907年、埼玉県浦和に生まれる。文芸春秋社、岩波書店勤務ののち、瀬田貞二氏らと「子どもの本研究会」を始める。以後、著述・翻訳に従事
吉井爽子[ヨシイアキコ]
1940年、東京に生まれる。女子美術大学洋画科卒。個展のほか、行動展に作品を発表
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かもめ通信
26
1907年生まれの石井桃子さんが、「古希」を迎える頃に執筆した幼い頃の回想録。物心ついて以来、何となく6人ひとかたまりのように考えてきた「きょうだい」が、1人2人と欠けていき、ついには自分ひとりになってしまったという桃子さんが、あれこれと思い出しながら語るのは、両親のこと祖父母のこと、4人の姉たちや兄のこと、同居していた「まあちゃん」のこと。舞台は明治の終わり頃で、私にとっては祖父母世代の話のはずなのに、読んでいるとどういうわけか胸が痛くなるような懐かしさでいっぱいに。2022/05/23
バニラ風味
23
小さい頃の出来事を、よく覚えていることと感心。子どもだからこそ、できた数々の出来事。近所の人の家を出入りしたり、事情をわからずにいて後でわかったこと、どこそこに、あんな店があったとか、スミレの花が咲いていたなど、なんてこともない事なのに、楽しく、面白く、自分まで懐かしい気持ちになってしまう。昔は、親戚、友人など、今では考えられないような、密なお付き合いがあったな、と実感。古きよき時代が、ぎゅっと詰まっていて、その時代が、モノクロで、目の前にぼんやりと見えてくるような気がしました。2020/09/03
シュシュ
14
1907年生まれの石井桃子さんが小学校に上がるまでの思い出を綴ったもの。幼い頃の様子をとても細かくたくさん書いてあり、面白かった。(記憶力、観察力のすごさに圧倒される!)大家族の上に近所の様々な人たちとの関わりがとても豊か。ご自宅があったのが浦和、中仙道のあたりで私にも少しなじみのあるところなのでなおさら興味深かった。またいつかゆっくりと再読したい。2014/10/12
あ げ こ
12
幼い日々の、それも〈ほんとうの日常茶飯事のほうが多い〉と言う記憶の、細々とつぶさで濃密な、その細部を読む楽しさ。人や家やものや、遊びや習慣や季節の行事や祖父直伝の昔話や、暮しの中にあって、特別なこととしてではなく、ほんとうの日常茶飯のこととして存在していて、日々、見たり聞いたりしゃべったり訪れたり、触れ合ったりしていたそれらのこと、自らの身体(目や耳や鼻や口や、手や足や肌)とも当然、直に結び付いていて、親密な。それは常に体験として、豊かに示され続ける。教訓としてではなく、何かを示唆するものとしてでもなく。2022/02/08
カタコッタ
10
小さい頃の思い出は意外にも覚えているものです。淡々と、明治末期の日本の風景が吉井爽子さんの挿絵(暗いけれども何とも懐かしい)とともに疑似体験した気持ちになりました。読みやすく、一気に読んでしまいました。2021/04/24
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