出版社内容情報
夜の闇を走る夜行列車の中には暖かさと人と人との触れ合いがあります。訛りのある会話さえ聞こえてきそうな暖か味のある絵で、夜行列車の旅へご招待します。
<読んであげるなら>4才から
<自分で読むなら>小学低学年から
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
197
上野から冬の金沢まで。古き良き、懐かしの夜行列車。今や2時間で着いてしまうその地も、夜を超えるほどに遠い、懐かしの故郷へ。大風呂敷を担ぐ者、出稼ぎから戻る者。吐息白く、別れを惜しみ寄り添う者、もう時間だから行くね。灯る列車を見つめ続けるけれど音は消えていく。網棚に沢山の荷物を載せて、ボックス席で器用に眠り、どんな夢を見ているのだろう。再会を待ちわびて。寝台車両で幼子が目覚めてはまた眠る。眠れずに窓辺を拭い、曇る夜空の雫を見つめる者もいる。久しぶりに逢いたいな。夜が明けるまでは。さあ着いたわ。行きましょう。2023/04/02
Kawai Hideki
88
昭和の時代感が魅力的な夜行列車の旅絵本。上野から金沢まで。字はなく、乗客の列車内での過ごし方をたんたんと描く。子連れが夜泣きで困っていたり、サラリーマンらしき集団が缶ビールで宴会していたり、若い二人がトイレの前で壁ドンして語り合ったりなど。改札、乗車時、夕食時、就寝時、真夜中、明け方、到着前、降車時と、それぞれの登場人物が違う場面でどこにいて何をしてるのかを追いかけるのが楽しい。2014/09/20
momogaga
73
【大人こそ絵本を】旅情があふれる絵本。 これからも読み続けていきます。 あわせて頭に浮かぶ歌は ”花嫁は夜汽車にのって とついでゆくの あの人の写真を胸に海辺の街へ” ”ああだから今夜だけは君を抱いていたい ああ明日の今頃は僕は汽車の中 旅立つ僕の心を知っていたのか” これらの歌も口ずさんでいきます。2016/07/04
へくとぱすかる
67
先ほど読んだ、椎名誠の『絵本たんけん隊』に登場した絵本。1980年の「こどものとも」が初出。それまでの取材期間を考えると、半世紀くらい前の光景だろう。けん引する機関車も、客車・寝台車も、列車そのものも、みんな過去に置き忘れてきて、それを絵本という窓からのぞかせてもらった思いがする。みごとに夜行列車の特徴をとらえ、夜行列車あるあるを生き生きと絵にしている。一度でも乗車した人なら、こんな旅は忘れられない思い出として残っているだろう。時間とともに車両の前方へ視点がかわり、場所も遠くに走っていく趣向が楽しい。2023/05/30
seacalf
63
ある程度薹が立ってる人なら懐かしさに目を細めるはず。個人的に上野駅はとても縁がある場所なので感慨深い本。LED掲示板の今とは違い、行き先表示の鉄の板を改札上に吊り下げる様子まで描かれている。当時の話を聞いたことがある身としては非常に面白い。今や昔とは比べられない程都会的でスタイリッシュになったコンコース。久しぶりに立ち寄ったら酉の市の多きな熊手が中央改札口に展示されていて、思わずカメラを向けてしまった。駅のことばかりで肝心の夜行列車について書けなかったが、当時を思わせる貴重な絵本だ。2017/11/19