感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
293
文はペーター・ニクル。『ミュンヒハウゼン物語』を定本とするが、抄訳や子ども向きの訳ではなく、文献・書肆の考証に基づいた本格的なもの。絵はビネッテ・シュレーダー(どうやら文のペーターの配偶者のようだ)。お話は18世紀らしいドイツの豪快なホラ話。ここまで荒唐無稽だと、安心して楽しめる。ただ、長さといい本格度といい、読み聞かせ向きではないだろう。絵のタッチは、ナイーフのアンリ・ルソーを思わせるもの。動きを一瞬のうちに静止させる画法が有効。色彩も幻想的で美しい。2024/01/01
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
93
弾丸切れの銃にさくらんぼの種を詰めて牝鹿の額にぶち込んだ。数年後同じ森で桜の木を生やした一頭の鹿に出会った……。18世紀に実在した貴族ミュンヒハウゼンを主人公にした冒険物語。オリジナルは1785年出版。多くの作家に書き連ねられ、ケストナーの脚本で映画にもなった。日本では星新一氏がオマージュの長篇を書いた。初版が出た時「ほらをふくならこのぐらいのほらを」と口先だけの政治家を揶揄する世論が起こったという。ファンタジーのようなほら話にビネッテ・シュレーダーさんの絵が素晴らしくマッチしている。1982年2月初版。2015/12/12
詩 音像(utaotozo)
33
有名な「ほらふき男爵の冒険」を以前からちゃんと読みたいと思いつつ、原典を翻訳したものはなんとなく面倒で、途中で挫折。数十年を経て、素敵な絵本に図書館で巡り会い手にとってみた。「なるほど!」と感心する見事なオチから、かなり下ネタっぽいもの、こちらの理解不足から「これで終わり?」と、読み直してしまうものまで、話の面白さは多岐に渡る。お気に入りは、表紙絵にもなっている、牡鹿の角の間に生えているさくらんぼの木。ページを繰った瞬間、本文を読む前にオチを見事に表したイラストが目に入り、図書館でつい吹き出してしまった。2017/04/09
メタボン
27
☆☆☆☆ 荒唐無稽なほら話ゆえに、かえって物語の力を感じさせる。氷原で馬をつないだのが教会の尖塔で氷がとけたら馬がぶらさがっていた、綱にベーコンをぶら下げて鴨を釣ったら鴨のお尻からベーコンが出て更に他の鴨がそれをくわえて数珠つなぎになり男爵もろとも空に舞い上がった、狐の尾っぽを釘で木にくくりつけ額に十字の切れ目を入れて毛皮から狐をたたきだし毛皮のみ手に入れた、馬に水を飲ませてもきりがないので見ると馬の下半身がなく下半身は牝馬とよろしくやっていた、など本当に面白おかしい。2016/04/10
小夜風
26
【図書館】ビネッテ・シュレーダーさんの絵目当てで借りました。絵本かと思ったら結構長めのお話でした。「ミュンヒハウゼン症候群」という虚偽性障害はこの男爵から名付けられているのですね。しかも実在の人物とのことで驚きました。タイトルの通り「ほら話」なのですが、前半は狩猟、後半は戦争の話で、全体的にちょっと下品でシュールでした(苦笑)。シュレーダーさんの絵が神秘的で素敵でした。2015/11/12