出版社内容情報
建久3年、九郎次は由比ガ浜で打ち首になった。時の強大な権力に抗して馬ぬすびととなり、壮烈な一生を終えた男の物語。作者の代表的な創作歴史文学。
<読んであげるなら>---
<自分で読むなら>小学中学年から
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nico🐬波待ち中
77
馬どころで名高い陸奥の国の、貧しい村に生また九郎次。辛い日々の中で唯一の楽しみは、野馬が自由に駆け回る姿を眺めること。村にとって馬は鎌倉幕府からの預かりもので人よりも大事にされる存在だった。馬ぬすびと…それは馬を戦の道具としか思わない武士のことなのか、それとも馬をこよなく愛し野に解き放そうとする九郎次のことなのか。誰を主体に持ってくるかで善と悪とがこんなにも変わるものとは。作者の魂の込められたアツい文章にすっかり惹き込まれた。人にとって、また馬にとっての本当の幸いについて思いを巡らさずにはいられない一冊。2022/10/15
モリー
63
本当の盗っ人は誰だ。人々から人間らしい暮らしを盗む者こそが本当の盗っ人なのではないか。鎌倉時代を舞台に描かれたこの物語の中には盗っ人が複数登場する。ただの盗っ人、権力を持つ盗っ人、権力者によって奪われたものを奪い返す盗っ人である。源頼朝が盗っ人ならば、現代における盗っ人は誰か。野馬は野馬らしく、人間は人間らしく生きるべきではないのか。私たちは、自ら馬小屋に戻るような馬に成り下がってはいないだろうか。人間らしさを盗まれているのに抵抗もせずに。誇り高く自由に生きるのは困難だ。しかし、飼いならされてはなるまい。2022/10/14
とよぽん
49
平塚武二 作、太田大八 画。1968年初版を、書庫から出してもらった。表紙からして何やら貫禄がある。百姓の9番目の末子で、極貧かつ孤独の中で育った九郎次は馬が大好きで、馬子になる。馬と共に生活するうち、馬の方が人間よりもずっといいとまで思うようになる。馬を真に生かすため馬ぬすびとになった主人公を通して人間の生き方を追求した、これは名作ではないか! 平塚武二の描く地べたの人間、武士の世への風刺、馬糞で手を温めるユーモアなど、読者を引きつけて離さない熱い物語だった。2021/01/31
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
12
鎌倉時代のおはなし。源頼朝の馬を盗んだ罪で、鎌倉の由比ガ浜で打ち首になった九郎次。なぜ彼が罪を犯したのかを読み取って欲しいです。 『司書と先生がつくる学校図書館』より6年生向け。2018/10/04
遠い日
10
時は鎌倉。九郎次の生涯は馬とともにあった。そもそも水飲み百姓の九番めの子ども。九郎という野馬に惚れ込み、生涯をその馬を思ってすごした変わり者。馬盗人の矜持をもって、たった一度の、たった一頭の馬のために盗人となって捕われた九郎次。打ち首を前に独白で語られる物語の凄まじさ、そのまっすぐで迷いのない生き方に、人間の底力をみる。人間として扱われたことのない出自の不自由さを、みごとに反転、自分の力として生きた九郎次に、精神の力をみる。九郎次は人間として、死んだのだ。2013/03/15
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