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内容説明
テキサス州東部を流れる川、ジェザベル。シーリアは今、その猛威の前に恐怖さえ感じていた。作家の父とダンサーの母とともに、世界各地を転々としてきた彼女は、故郷と呼べる場所がほしくて、両親の死後、父方の祖母の家に移ってきたばかりだった。初夏、降り続く雨にジェザベルの水量は一気に増し、川は狂った生き物のように岸辺の家を襲ってきた…。シーリアは、あわてて身の回りのものを持って屋根裏部屋に避難した。「すごい眺めだな」窓から外を見ていた彼女の背後で、男の声がした。エリック―自然の力に圧倒されるあまり、彼がいることを忘れていた。彼は嵐の中を姉のところへ向かう途中、車が水浸しになり、洪水に襲われる直前に、彼女の家に助けを求めてきたのだった。各地を放浪して歩いている彼は、男らしい容貌に似合わず、長く優美な手をしていた。だが、その手に走る白い傷跡のように、どこか暗く心を閉ざした、悲しげな影があった。川の猛威と、目の前にいるハンサムな男性。シーリアは彼とふたり、屋根裏部屋に閉じ込められてしまったことを、強く意識し始めていた。