内容説明
江戸前鮨の開祖の流れを汲む「〓寿司」の握りには、今や消えつつある仕事と心意気が宿っている。一年にわたって「〓寿司」に密着し、暦をめくるように移りゆく旬の鮨種とその仕事を追いかけた。
目次
人形町で、もうすぐ百年。
「〓寿司」のマグロは美しい。
カジキが呼んでいる。
鮨ツウの心をときめかせる印籠詰め。
口いっぱいに多幸が満ちるたこ。
蛤が春の訪れを告げる。
ちらしは、吹き寄せる波のように。
春の貝づくし。
最高の鯛に逢う。
ひときわ可憐な小鯛。〔ほか〕
著者等紹介
中原一歩[ナカハライッポ]
1977年、佐賀県佐賀市生まれ。ノンフィクション作家。地方の鮨屋をめぐる旅鮨がライフワーク。2012年より“津軽海峡”で漁船に乗ってマグロ漁の取材を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
86
大正時代から人形町で店を構えて約百年。頑なに江戸前鮨の伝統を守り続けてきた。粋で洒脱な先代の油井隆一親方は3年前に逝った。先代からの約束で、㐂寿司の1年間を密着取材した。自由に好きな鮨を食べてもらおうと、採算が取れないネタも馴染みの魚屋から一級品を仕入れる。穴子のツメは、捌いたアナゴの中骨、頭、野菜の皮を煮詰めて毎日作る。これぞ老舗の仕事。干瓢の元となる夕顔が市場で手に入りずらくなった。今は4代目が守る江戸の伝統。いつまで文化が継承できるかわからない。会える時に会いに行こう。いつしか失くしてしまわない内に2021/10/26
アンリ
2
大正十二年、日本橋芳町(現在の人形町)に開かれた㐂寿司の仕事に密着した丁寧な記録。著者の文章と掲載されている岡本寿さんの写真の美しさが相まって、たいへん食欲をそそる。各すしネタの仕込みの工程も丁寧に記録されていて、江戸前寿司の奥深さに感じ入る。あぁ、お寿司が食べたい!! dancyu掲載時の順番に沿っているのかもしれませんが、書籍化にあたり、各章の並びを四季にそったものにしたら更に読みやすかったのかなと思います。2024/09/10