内容説明
原発被災者の精神的な苦悩は、戦争被害に匹敵する。故郷を失い、未来を奪われて「難民」化する避難者たち、今なお喪失の時間に囚われて生きる被災者たち―。原発事故直後から被災地の診療所で診察を続ける著者が発見した、被災地を覆う巨大なトラウマの存在。
目次
1 悲しむことは生きること
2 当事者の語りから―私の仲間たち
3 Dr.ありんこのサバイバル日記
4 東北の貧しさ…稲作と移民
5 トラウマからの回復
6 子どもの心に何かが起きている
著者等紹介
蟻塚亮二[アリツカリョウジ]
精神科医。1947年福井県生まれ。72年、弘前大学医学部卒業。85年から97年まで、青森県弘前市の藤代健生病院院長を務めた後、2004年から13年まで沖縄県那覇市の沖縄協同病院などに勤務。13年から福島県相馬市の「メンタルクリニックなごみ」院長を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
今庄和恵@マチカドホケン室コネクトロン
22
福島で被害に遭われた方々のケーススタディのつもりで読み進めたら、なんと、これは日本のお家芸ともいえる「棄民」について書かれたものだった。福島の方々が震災によって受けた心の傷、それと並ぶものとして沖縄の詳細がレポートされているのだけど、なんだ、沖縄も福島も国に都合よく使われ踏み躙られた存在だったのか。ほんとただの捨て駒。踏み躙られた人々は心の傷を抱えてどう生きていけばいいのか。同じ傷を持つ医師は、それでも生きてくれ、と自身の力を差し出すしかない。いやー、読んでめっちゃやるせなくなりましたよ。2024/09/03
和
0
福島の原発事故によって故郷を失い、トラウマとなった被災者の方々の声が書かれています。著者は精神科医で、沖縄戦のPTSD患者を診られてきました。本書では、沖縄戦と福島原発事故とで共通する点が整理されています。私の学び: ①震災や戦争を通して他人の死を見たことで心にストレスを抱える一方で、悲しむことができない場合、傷が治らず深まることが多いこと②故郷がなくなり環境が変わることで心のストレスがさらに大きくなること③原発事故は人災であって、被災者の回復には加害者の謝罪が不可欠なのに、されていないこと2025/03/23