内容説明
いくどもの失敗と蹉跌をのりこえ、「平和」と「平等」を求めてやまなかった仏教者の生。植木徹誠…浄土真宗僧侶。戦時下に反戦・反差別を説き、4年間投獄。俳優・植木等の父。
目次
第1章 労働者から僧侶へ(徹之助、東京へ;よく学び、よく遊び、よく信じ ほか)
第2章 平等と平和(転居;三宝寺説教所 ほか)
第3章 日中全面戦争勃発(日中戦争と「戦争支持熱」;戦争勃発と運動の方向転換 ほか)
第4章 弾圧と朝熊からの退去(全国的な弾圧;遠藤陽之助の逮捕 ほか)
著者等紹介
大東仁[ダイトウサトシ]
1965年、愛知県生まれ。1987年、奈良大学文学部史学科卒業。1990年、真宗大谷派にて得度(僧侶となる)。1991年、同朋大学別科(仏教専攻)修了。真宗大谷派圓光寺住職。真宗大谷派名古屋教区教化センター研究員。大阪経済法科大学アジア研究所客員研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小鈴
27
植木等の父親で僧侶の徹誠の社会運動家としての側面、特に朝熊闘争を中心にまとめたもの。反戦、平和活動家というよりは差別問題や貧困対策の活動家。時が日中戦争、太平洋戦争に突入したから反戦を唱えているように見える。侵略した土地で利益を得るのは資本家だけだと訴える。1937年まではわりと自由に反戦の発言をしているのが新鮮だった。特高外事月報に発言が残っていて、取り締まる側の資料の掲載なので間違いないだろう。37年まではわりと言いたい放題発言できていたのだ。戦前何度も逮捕されたが、共産党員になったのは戦後であった。2018/12/16
きいち
26
植木等が『夢を食い続けた男』で描いた父・徹誠の姿。真宗大谷派の僧侶となって被差別地域の寺に招かれ、見出した不条理と闘い敗れた父から彼がいかに多くを学んだか、学生時代に読んで心動かされたことは強く覚えている。著者大東も僧侶。宗派全体が戦争協力に雪崩を打つ中はっきりと反戦を貫いた先達として、徹誠の姿を描く。◇戦後は東京で商売人となる。晩年「徹誠」の名で揮毫した「水の教訓」という軸が収められていて、とてもいい。「障害に逢い激しく其の勢いを百倍する者」「自分を清め他を洗い清濁併せ入るる者」そんな水の姿が理想だと。2019/01/21
てくてく
8
植木等の父であり、戦前に部落問題や反戦運動にかかわった徹誠を描いたもの。資料は植木等の『夢を食い続けた男』や警察関係のもの。三重県朝熊地域の問題や昭和12年から本格化する物言えぬ空気のようなものが描かれていて面白かった。「自分を清め他を洗ひ清濁併せ入るゝ者は水なり」などを含む水の教訓が印象的だった。 2019/03/17