内容説明
父親殺しの阿闍世について、悪人でも救われるという教えから、悪人阿闍世は仏の救済の目当てと進化する。悪人でも救われるという考えは、悪人正機を説く親鸞によって大転換する。そのプロセスを検討した。
目次
第1部 仏教文献に見える阿闍世物語(阿闍世物語の概要;『沙門果経』に説かれる阿闍世物語;律蔵に説かれる阿闍世物語;『仏説阿闍世王経』その他に説かれた阿闍世物語;『涅槃経』に説かれる阿闍世物語;『観無量寿経』に説かれる安闍世物語―五逆・謗法の悪人の救い)
第2部 悪人成仏の思想史(阿闍世物語にみる悪人成仏の経典史;善導以前の悪人成仏の思想;善導の悪人成仏の提唱;親鸞による悪人成仏の確立)
著者等紹介
永原智行[ナガハラトモユキ]
1962年和歌山県生まれ。1984年龍谷大学文学部仏教学科真宗学専攻卒業。現在、浄土真宗本願寺派和歌山教区日高組教専寺住職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マウンテンゴリラ
2
阿闍世またはその父母を主人公とする王舎城の悲劇は、仏教、特に浄土教の教義を最も象徴的に示す物語といえるだろう。しかし、その物語の内容も、そこに説かれる教義的主張も、出典となる経律論によっていくつかの多様性があることを本書によって知ることができた。その事自体は、仏教を知る上での雑知識に過ぎないかもしれないが、いずれの物語においても見られる、人間というものの愚かさ、仏の道への遠さは、現代における物語の複雑で緻密なストーリー性とは裏腹な感動の軽さとは、次元が違う深淵さを示しているように思われる。→(2)2016/04/09
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