内容説明
三十三間堂や京都国立博物館をおとずれたことはあっても、かつてこの地に巨大な大仏殿と大仏があったことを知る人は少ないだろう。それではなぜ秀吉は東山の地に新たに大仏や大仏殿を建立したのだろうか。本書では、東山大仏をめぐって秀吉と豊臣政権がくり広げたいくつかの興味深いできごとを通して豊臣政権やその宗教政策について考えてみることにしたい。
目次
第1章 東山大仏の出現(新紫野から新大仏へ;寺の名は大仏)
第2章 大仏千僧会の開始(秀吉の先祖供養;新儀の八宗)
第3章 善光寺如来の遷座(大地震と夢語り;新大仏から善光寺如来堂へ)
第4章 大仏鎮守の建立(善光寺如来の帰座と秀吉の死;大仏鎮守、新八幡、豊国)
著者等紹介
河内将芳[カワウチマサヨシ]
1963年大阪市に生まれる。1987年京都府立大学文学部卒業。1999年京都大学大学院博士課程修了。京都大学博士(人間・環境学)。1987年甲南中学・高等学校教諭、2001年京都造形芸術大学芸術学部専任講師、2003年同助教授、2005年奈良大学文学部助教授、2007年同准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
16
秀吉が京都に作った東山大仏を紹介した一冊。政権のプロパガンダ施設として作られ、大仏自体に秀吉の宗教的な思い入れは薄かったが、相次ぐ親族の死や秀次事件により評価は一転。宗教的な意味合いが高まるが、慶長大地震によって大仏は倒壊し、代わりに甲斐善光寺の如来像が入れられるという予想外の展開に。まるで昨今の大型イベントのドタバタ、グダグダぶりを思わせる展開が印象的。ただ大仏千僧会のための仕組みが、江戸時代の宗教秩序の基軸となったという指摘も。独裁者の気まぐれで片づけず、史料に基づいてその歴史的な意義を説いている。2022/10/14