内容説明
慈円への入室、六角堂参籠、玉日姫との婚姻説、善鸞義絶事件―。親鸞の伝記研究を進めるうえで、障害となるのは史料の乏しさにある。数少ない確実な史料を緻密に検証することで、歴史研究者として親鸞の事蹟の真偽を究明する一方、民衆の苦難と自らの思想信条とのはざまで悩み苦しむ親鸞の姿をも描きだす。歴史学者の視点で解明する、親鸞研究の決定版!
目次
第1章 誕生から延暦寺時代
第2章 延暦寺からの出奔
第3章 建永の法難と親鸞
第4章 越後での流罪生活
第5章 東国の伝道
第6章 親鸞の思想構造
第7章 善鸞の義絶
第8章 親鸞思想の変容
著者等紹介
平雅行[タイラマサユキ]
1951年大阪市に生まれる。1975年京都大学文学部卒業。1981年京都大学大学院博士後期課程研究指導認定退学。博士(文学)。京都橘女子大学文学部助教授を経たのち、関西大学文学部助教授、大阪大学文学部助教授、同教授、同名誉教授、京都先端科学大学人文学部教授、同特任教授を歴任。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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浅香山三郎
9
書名のとおり、親鸞の様々な伝説的要素を洗い直し、史実として確からしい線を示した上で、その人生を論じる。例へば親鸞とその伯父たちの事績(とくに範綱の後白河近臣としての活動など)を示し、顕密寺院の中での親鸞の立ち位置を検討し、慈円に師事したといふ伝承を斥けたり、親鸞が比叡山を下り法然に師事するに至る事情を再検討したりしてをり、示唆に富む。この他、第6章の「親鸞思想の構造」は「疑心の善人」を梃子に、「悪人正機説の克服」こそが親鸞思想の核心であるとする。その他、善鸞の義絶問題の理解など、極めて中身が濃い本。2022/05/04
masanari
1
第1章は親鸞の家柄について微に入り細に入り論じる。親鸞の叔父の官位は何で、これは当時どの程度の権力があったかなど。もう一般書というより研究書で、投げだしかかっていたが、徐々に読むスピードが上がった。限られた資料のなかで親鸞の抱えた葛藤を取り出すさまは推理小説読んでいるよう。親鸞の入門書としてではなく、2冊目以降にぜひおすすめしたい本。2022/02/01
笛吹岬
0
史料を駆使し、一般の読者でも充分追える手堅い論。しかし、一般書を舞台として批判に対する反論の仕方としては、疑問があり、最後まで読み通すことをあきらめる。2022/07/24