内容説明
紙芝居や小説・映画を通じて祇園祭に託された「権力に抵抗する民衆の祭」というイメージは、はたして実態に合うものなのか。紙芝居などの題材である戦国期の祇園祭(祇園会)にスポットを当て、室町幕府や延暦寺との関係、そして神輿渡御・山鉾巡行を担う都市民の姿、乱世の煽りを受けて式日が混乱を極めていく様子を、当時の政情や政教関係を踏まえて描く。イメージと史実を比較し、中世都市祭礼たる祇園祭のリアルに迫った労作。
目次
第1章 イメージとしての祇園祭(紙芝居「祇園祭」;小説『祇園祭』と映画『祇園祭』)
第2章 天文二年の祇園祭(天文元年~二年六月の政治状況;天文二年の祇園祭)
第3章 室町幕府にとっての祇園祭(祇園祭の再興;幕府と祇園祭)
第4章 延暦寺大衆にとっての祇園祭(日吉社の祭礼と祇園祭;延暦寺大衆と祇園祭)
第5章 神輿と山鉾の祇園祭(神輿渡御;山鉾巡行)
著者等紹介
河内将芳[カワウチマサヨシ]
1963年生まれ。京都大学大学院博士課程修了。京都大学博士(人間・環境学)。奈良大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nagoyan
16
優。紙芝居「祇園祭」に典型的に見られる「祇園祭は「町衆」のもので、権力に対抗関係にある」という観方の真実性を問う。まず、幕府権力は祇園祭の執行に熱心であった事実が示される。そして、祇園祭を幾たびも中止に追いやった主体として叡山の大衆の存在が示される。本社末社の関係から日吉社祭に先んじて祇園祭を行うことに反対する。祇園祭の経済的主体として馬上役、土倉役を担う富豪の存在があるが、これと大衆とは関係が深い。山鉾巡行は神事から離れて下京の町によって担われていく。ただ、どこか隔靴掻痒な議論。2022/10/13
田中峰和
7
2020年、コロナパンデミックによって、祇園祭の山鉾渡御が行われなかったのは、応仁の乱の影響で33年間中止されて以来のこと。疫病や伝染病に対して、この祭りが当時の人々の取れた対抗策であったことを考えれば皮肉ともいえる。本書では戦国時代の民衆が「権力に抵抗する民衆の祭礼」というイメージを形成した経緯を説く。まず祇園祭の「紙芝居」と「映画」を題材に説明する。前者は室町将軍の横暴に対抗する民衆、後者では細川春元への抵抗が描かれる。いずれも戦後の民主主義と左傾化が生んだ作品と思えば納得できるが、現代ではどうか。2022/04/24
たけとり
2
資料を紐解いて、町衆や戦国の頃の祇園祭がじっくりとわかりやすく解説されていて良かった。映画は全然知らなかったんだけど、言われてみると、その映画や元になった資料のような「祇園は町衆の祭り」というイメージを植え付けられていますな…。しかし資料には常に、信ぴょう性の問題がまとわりついてくるのだなぁ…。 2023/08/01