内容説明
敗戦を「神やぶれたまふ」と表現した折口信夫。やがて“神”から“人間”となった天皇や、神道指令後の日本神道に、彼はいかなる可能性を見出そうとしたのか。「日本神道の“対抗宗教改革”プラン」「神と精霊の対立というパラダイム」「“新国学”の戦前と戦後」など、折口学の深淵へと果敢に挑んだ論考を収め、擁護や否定といった枠組みを超えた折口理解“第三の道筋”を切り拓いた画期的労作。
目次
第1部 折口信夫の戦後天皇論(「女帝考」はなぜ書かれたか;日本神道の“対抗宗教改革”プラン)
第2部 折口古代学の基礎理論(神と精霊の対立というパラダイム;“神”観念と“性”のメタファー)
第3部 折口信夫と柳田国男(『古代研究』の成立まで;“新国学”の戦前と戦後)
第4部 終章(いま折口信夫をどう読むか)
著者等紹介
中村生雄[ナカムライクオ]
1946年静岡県生まれ。京都大学文学部(宗教学専攻)卒業、法政大学大学院修士課程(日本文学専攻)修了。静岡県立大学教授、大阪大学教授、学習院大学教授を歴任。2010年歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うえ
8
濃厚な論文集。柳田との関係にも深く迫っている。「昭和四年四月に刊行された『古代研究』の冒頭に、柳田から雑誌『民族』への掲載を拒否された「国文学の発生(第三稿)」を置くことによって、折口は柳田に対する学問的な訣別を行った。そしてその後…民俗学会、およびその機関誌である『民俗学』の中心に折口が祀り上げられる格好になり…不快に感じた柳田がそれらに一切かかわりをもたないという異常な状態がつづいた…折口はこの時期、事実上、柳田邸へは出入り差し止めという状態で…機関誌誌上でことあるごとに柳田の学問や業績を褒め上げた」2021/07/03