内容説明
気がついたら老境に入っていた。老人にはすることがない、体力がない、楽しみがない、死が近い。著者キケロは、この四つの悲観的通念を吹き飛ばし、老年の幸福を実例をあげて論証する。そこでは社会問題としての老人論ではなく、あくまで心がけの問題として実践的な知恵が展開される。老年もなかなか捨てたものではないと、多くのひとに力を与えつづけながら二〇〇〇年読みつがれてきた老年のための幸福論。
目次
老年論(キケロ)(スキピオとラエリウスの懇願;幸福な老年の実例をあげる;老人はすることがないという通念に反論する;老人には体力がないという通念に反論する;老人には何の楽しみもないという通念に反論する;老年には死が近いということについて)
私の老年論―キケロに寄せて(八木誠一)
著者等紹介
キケロ,マルクス・トゥッリウス[キケロ,マルクストゥッリウス] [Cicero,Marcus Tullius]
紀元前106年~紀元前43年。共和政ローマにおける政治家、哲学者
八木誠一[ヤギセイイチ]
1932年生まれ。専攻、新約聖書神学、宗教哲学。東京工学大学名誉教授、文学博士(九州大学)、名誉神学博士(ベルン大学)
八木綾子[ヤギアヤコ]
1930年生まれ。津田塾大学卒、東京大学大学院古典学科修士課程卒(ラテン語、ラテン文学専攻)。2000年歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いとう・しんご
11
キケロによる本論は勿論、古典であり流麗博識で素晴らしい(訳文もとても良い)。しかし、それ以上に訳者が巻末に寄稿している「私の老年論」が素晴らしい。高齢に達した聖書学者が荘子や仏典を引きながら論じていて、聖書の向こうに突き抜けた議論を展開している。この人にして自分の思いと共通する地点に達していることを発見して歓びでありました。2025/01/11
Susumu Kobayashi
6
二人の青年、小スキピオ・アフリカヌスとガイウス・ラエリウスが大カトー邸を訪問して、彼から老年についての話を聞くという形式で、キケロが執筆したもの。対話は紀元前150年に行われたという想定で、カトーは84歳、スキピオ35歳、ラエリウス38歳ということになる。「老年に対抗する最良の武器は、もろもろのよき能力を磨き行使しておくことなんだ。そういう能力は、一生を通じて養われると、長く充実した人生の終わりに驚くべき実を結ぶものだ。これは生涯の最後の時でさえ人を見捨てないんだからねえ」(p. 28)。2020/03/20
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