内容説明
2000年5月、日本中を震撼させた「西鉄バスジャック事件」。犯人は17歳の少年。イジメ、不登校、引きこもり、家庭内暴力…。最後はモンスターと化し、無差別殺傷事件を起こすに至る。少年の心が壊れていく過程を、家族の苦悩を、いま改めて追う―。
目次
第1章 子ども時代に顔を見せるモンスターの片鱗
第2章 荒れた心を深化させた飛び降り事件
第3章 引きこもりと父親との「お出かけ」
第4章 壊れ始めた心
第5章 保護入院という牢獄
第6章 復讐への旅立ち
第7章 バスジャックの決行
第8章 逮捕されて振り出しに戻った
第9章 モンスターの心象風景
第10章 ブラックヒーローになれたのか
著者等紹介
入江吉正[イリエヨシマサ]
1952年佐賀県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。月刊文藝春秋、週刊ポストの記者を経て現在はフリーランス。文藝春秋2000年12月号で「『バスジャック少年』両親の手記」を発表し、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞スクープ賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パフちゃん@かのん変更
76
14年前のこの事件、はっきり覚えています。TVでもリアルタイムで実況していたし。そうか、彼はもう医療少年院を出ているのですね。未成年が事件を起こすと親の育て方が悪いと批判されますが、この本を読んだ限り、親は酷い目に遇いながらも見捨てず精一杯やっているように思う。実際自分がその立場だったらどうしただろうか。彼の場合、育て方というよりも生来の気質や性格、あるいは中学生の頃から精神的な病気にかかっていたように思う。頭の中の声に対し『僕は彼と一生二人で生きていく』と書いていて、やはり何らかの精神疾患だと思われる。2014/12/04
らむり
55
重大(十代)犯罪者のうち、精神障害者に対する配慮について考えさせられました。また、この事件が被害者、被害者家族の他、加害者家族にも大きな後遺症を残したことも印象的。バスジャック犯行の場面は、ノンフィクションでありながら、猟奇ホラー小説のようでした。2014/10/13
ナミのママ
45
2000年5月、佐賀県で当時17歳の少年がバスをジャックし1人が死亡、3人が負傷。2006年3月、23歳で医療少年院を退院、その後社会にて生活している。…ずっしりと重い内容でした。事実が淡々と時系列順に書かれています。誰が悪かったのか、どう対処すべきだったのか、現在はどうなのか、これからの不安はなど、読んでいて頭がパンクしそうになりました。自傷・他傷のおそれがある者は強制的に入院させることができることの周知、医療少年院退院後の受入れ先、累犯の恐れがあるものの収容先など事件が起きる前に考えて欲しいと思います2014/09/18
鈴
29
他の少年犯罪と比べると、ご両親はダメな育て方だったとは思えない。むしろ息子の異変に気付き、一生懸命頑張っていたと思う。完璧な子育てができてる家庭なんて絶対ない。どこの家庭でも、子供がなにか事件をおこしたとしたら、必ずひとつやふたつ、お母さんのあんなところが~お父さんのこんなところが~と、ダメな部分をあげられるはずだ。わたしがもしこの少年の母親だったとしても、やはり同じ結果、または自分が殺されてるパターンかも。子育てによって作られるモンスターもいるけど、最初からモンスターを産んじゃう場合だってあるんだと思う2014/11/06
yumiusa
15
【図書館】「ある日、」というより「なるべくして、」という方が適切かと思えた。どうして両親共に、息子の奴隷のようにこき使われ続けたのだろう。読んでいて、この犯人の少年だけではなく、私も一人息子の親として両親に腹が立ってきた。どちらかが突き放し、どちらかが話を聴く…など。せっかく両親が揃っているのだから、役割を分担することもできただろうに。揃いも揃って、息子が自分達に対してする下僕のような扱いを(不思議な位)受け入れているように感じた。ここまで親をなめて育ったら、世間もなめるようになるのは、必然だろうと思う。2015/10/09