ノリス氏の処世術

ノリス氏の処世術

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  • サイズ B6判/ページ数 248p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784830104336
  • NDC分類 933

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

扉のこちら側

61
2017年176冊め。【294/G1000】既読感があると思ったら”The Berlin Stories”の一遍だった。物語は1930年に始まり、三流ペテン師であるノリス氏が、第一次大戦後の政治的混乱を利用し小賢しく立ち回る。次第に濃くなるナチスの影に、私生活が侵されていくベルリンの様子が生々しい。ノリス氏のキャラクターが道化的であるがゆえに、政治的な側面が空恐ろしく感じた。 2017/02/20

NAO

39
第一次世界大戦後、ドイツはひどいインフレで、富める者と貧しいものの差が大きく、浮ついた雰囲気でありながら、その中に嵐を予感させるような緊迫感が漂っている。そして、こういった世界でしか生きられないような者たちが、吸い寄せられるようにベルリンに集まってくる。この話は、ノリスが何をやったのかということが問題なのではなく、ノリスのような人間を引き寄せてしまうベルリンの異常さを描くことに主眼が置かれている。それにしても、労働者たちの台頭とストライキ、共産党の躍進、その陰で勢力を増していくナチは、何とも不気味だ。2015/11/21

syota

28
ポイントは、この話をどう解釈するかだろう。本書の訳者北村弘文氏のように、ワイマール共和国の無力化とナチスの台頭という政治的悲劇を描いた政治小説と捉えるか。先行訳である文藝春秋新社版(邦題は「山師」~NAOさんのレビューで知りました、感謝)で訳者の吉田健一氏が述べているように、爛熟しきった退廃と、無定見から生じた異例の自由さに溢れた当時のベルリンを回顧したものと捉えるか。私は、一読した限りでは吉田氏の見解に共鳴した。(続)2018/06/15

春ドーナツ

14
ワイマール共和国に「風」が吹き始める。相前後して「私」はベルリンに向かう客車でノリス氏と知り合う。図式的には「私」がワトソン博士で、ノリス氏はホームズだと思う。つまり「私」はノリス氏を観察して記述するのだ。彼は名探偵のように愛嬌はあるが曲者で、やっぱり「私」は翻弄されるのが読みどころ。推理小説とは違って、断片と断片が繋がっても線にはならず、怪しさが増すばかり。「ノリス氏の処世術」は何の為なのか。ユニークなのはそれが明らかになった後も氏は処世術を必要とするところにあると思う。一度ついた**は最期まで・・・。2018/06/21

きゅー

12
1931年、ナチスの台頭を目前に控えたベルリンが舞台。ノリスという人物は驚くほど滑稽だ。ちょっとしたことで異様なほど動揺するかと思えば、SM本を収集したり、娼婦に打たれて快感を味わう。そしていつも人の顔色をうかがって、自分の生活は秘密にする。しかし彼には愛嬌があって彼のことを嫌いになることは難しい。実はこの物語は政治小説なのだが、政治活動の中で人間性を喪失した人々が多く登場する。ノリスの滑稽な言動を楽しんでいるうちにいつのまにやら私自身が絡め取られ、ノリスの獲物となってしまっていた。2016/02/25

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