出版社内容情報
動けない植物が,食べられないよう身を守る術とは?
動けず,声も出さない植物は喰われっぱなし? でもよく調べると,意外と食べられていないこともわかる。じつは巧みな護身術を駆使して,植物食動物の害を低く抑えている。防御物質や形態,ボディガードの利用などの方法から変化する環境に応じた対応まで,被食防御の実態と研究手法を紹介。
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・丸坊主になったりして目立つこともあるけれど,じつは植物は意外に喰われていない。かれらが植物が動物に食べられないように身を守るすべとは?
・有毒物質を蓄える,細かい毛で食べにくくする,報酬を払ってボディガードを雇う,見つかりにくいようにカムフラージュする,形を変えて利用しづらくする……目のつけどころの妙が明らかにした植物の巧みな護身術を紹介。研究者は植物の防衛をどうとらえてきたか? 研究の歴史を概観。
・複雑な構造を持つ森の中で,他の植物との競争がある環境で,さらには外来生物の影響で,防衛戦略は変わるのか?
天敵を呼び寄せる,アリを使って防衛する……食べる側の昆虫の事情を利用することも。
葉の切れ込みが効果的? イモムシや石に擬態する? 植物がカムフラージュする……? 意外な護身術とは。
・植物の被食防御の研究史と新たな視点による研究例に加え,基本的な研究手法を紹介。植物食動物と植物の生物間相互作用を被食防御の視点からとらえる2023年刊『植物の行動生態学』(978-4-8299-6209-1)と合わせて読みたい。
目次
植物の多様な護身術に関する温故知新
第1部 多様な環境に柔軟に応答する植物防御のしくみ(環境変動が高木の植物と昆虫の相互作用に与える影響;アカメガシワによる共生者の行動操作;天敵を利用した植物の防御応答―昆虫と植物それぞれの事情)
第2部 植物の防御と進化(正解のない生き方―被食防御戦略の進化で変わる植物間相互作用;外来植物の防御の進化―植食性昆虫との相互作用の地理的変異に着目して;連合効果を介したトライコーム二型の維持―ハクサンハタザオとハムシを例に)
第3部 これまで見落とされがちだった植物防御の新側面(葉の形による被食回避―葉を巻く甲虫オトシブミが利用しにくい葉の形;植物も見た目で身を守る―視覚による対植食者防御の世界;地下部における植物と昆虫の相互作用研究の展開)
第4部 植物防御形質の評価方法(食害量の定量手法;物理防御形質の評価方法―葉トライコームと葉の力学的特性の定量;汎用機器を用いた総フェノールおよび縮合タンニンの定量方法;HPLCを用いたからし油配糖体定量のための抽出方法―日本での生態学研究のための方法;花外蜜の分泌量の測定と糖成分の分析)