内容説明
勝海舟はナイフを研ぎ、自分の頭や指の悪血をしぼり取りながら、剣術使いの景山虎之介に事件報告を聞いていた…。仮面舞踏会で政商・加納五兵衛が何物かに殺されたのである。歓楽と裏外交が華やかなりし鹿鳴館時代の上流社会を舞台に次々とまき起る猟奇的な殺人事件の数々。このナゾ解きに、旗本の末孫で洋行帰りの男前なハイカラ男・結城新十郎の名推理が冴える!勝海舟の心眼が勝るか、はたまた新十郎の推理があたるか?日本の転形期であるこの時代の風俗や世相をユーモアたっぷりに浮き彫りにした捕物小説!坂口安吾の隠れた名作が今よみがえる。ベスト7篇収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あらたま
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アニメUN-GO繋がりでようやく読み終えた…。明治初期はある意味薩長による占領時代であって、それを戦後(執筆時期)のアメリカによる占領期に重ねたとか。アニメでは更に近未来の「敗戦後」に設定されてました。明治〜戦後文学は現代文であっても「平成語」とズレるせいか個人的に読みにくいんだけど、これは地の文台詞ともにテンポ良くすいすい読めた。ただ「石の下」はどうしても解法がわからぬ。2013/04/17
二見
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UN-GOを経てからの原作。探偵は遅れてやってくる。探偵・結城新十郎に話が行くまでの経緯を長々と語り、海舟が机上推理を弄し、新十郎が依頼者に対し真相を解明するという流れ。活字慣れしていない人は事件の経緯時点で力尽きるかもしれません、または、どんどん内容が頭に入ってこなくなるかもしれません。因みに当方は後者のタイプで、この本に収録されている一番最後の話(タイトルすらも思い出せない)はどう頑張っても内容が頭に入りませんでしたすみません。個人的に一番切ない終わり方だなと感じたのは『ロッテナム美人術』です2012/04/08
かなめ
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白痴・堕落論とはまったく毛色が違う。かなりとっつきやすい。通俗化したと評価した人の気持ちもわかる。推理物としてよりも書かれている明治開化の混沌した世相が興味深い。面白い
圓子
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本当はこれでなくて、青空文庫にて。探偵小説といっても、推理小説とは違う。ミステリとサスペンスの中間点かなぁ。結構荒削りな文章だ。「桜の森~」のように観念的な部分はほとんどなくて、面白がって書いているような感じかな。筋運びや書き振りがだんだん変わっていくのも面白いところ。勝海舟のヘナチョコぶりが楽しい。それにしても、泉山虎之介に花廼屋因果ね。2011/11/05