内容説明
浜辺に打ち上げられた巨大な物体。絡みつく藻やゴミを取り除いて現われた水死体のあまりの美しさに、村の人々は息をのみ、何くれとなく世話を焼く。ガルシア=マルケスの表題作「美しい水死人」をはじめ、17人の作家が、独特の時間の流れの中に織りなされる日常と幻想の交歓を描く。豊穣なラテンアメリカ文学の薫りをあますところなく伝える短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
50
オクタビオ・パス、カルロス・フェンテス、ガルシア=マルケス、ホセ・ドノーソなど、ラテンアメリカ文学を代表する作家たちの短編17篇を収めたアンソロジー。ホセ・ドノーソの「閉じられたドア」が読めただけでも見っけもの。生活のしがらみに悩まされることなく、好きなだけ思う存分眠ることが生きがいになってしまった男。夢の世界に囚われ眠る時間が欲しくて仕事までやめてしまう。日常と幻想が織りなす不思議な世界に酔いしれること、間違いない。2013/03/20
マリリン
42
短編集。表題作も含め作品から幻想的な情景が漂う。読んでいて万物が神のように感じるのも、風土からなのだろうか。特に印象に残ったのは「波と暮らして」。「山椒魚」「水に浮かんだ家」「薔薇の男」「羽根枕」も面白い。「パウリーナの思い出」は読んでいて感じた違和感は...そうだったのか。書かれた時代は古いが、独特な世界観が魅力的だったが、読む時を選ぶ作品かもしれない。水死人すら美しく語られる。大きい事にも宗教的な意味があるのかもしれない。2020/05/11
501
17
マルケス、コルタサルをはじめラテンアメリカ作家17名による短編集。リアリティの中に蝶が舞うように幻想が交差する。これだけ 充実したアンソロジーを編纂した編纂者の審美眼の素晴らしさが伺える。解説も充実しており、ラテンアメリカ文学の背景、各作家の紹介がされラテンアメリカ文学に触れる一歩としても最適な一冊。2017/06/22
三柴ゆよし
16
ドノーソ「閉じられたドア」、カサーレス「パウリーナの思い出に」、エルナンデス「水に浮かんだ家」など、傑作揃いのアンソロジー。2018/08/04
はる
16
図書館本。こんなに暑い夏の盛りに、こんなに不思議な濃い短編集を読むことになるとは!16の話を次から次へと続けて読むわけにはいかず、長いこと鞄の中で揺れていた。電車の中バスの中、なぜか移動中と相性が良かったみたいだ。「波と暮らして」「美しい水死人」は絵が浮かぶほどに楽しく、「薔薇の男」に抜け首のろくろ首を思い、「犬が鳴いてないか」に熱のある時の悪夢を感じて、ほんとうに夏にぴったり。(できれば手元に置きたい一冊)『マルケス&リョサ祭り』のイベントに感謝します!2014/07/29