内容説明
町かどのポストのそばのミカン箱。ジムじいさんはいつもそこにすわっていました。通りに住む少年デリーは、若い頃船乗りだったジムの、奇想天外な冒険談に胸を躍らせます。―8歳の少年と80歳の老人の間に芽生えた友情を、新鮮な着想とあたたかいユーモアで描いた、楽しく優しい物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
がらくたどん
25
レビューを拝見して大好きなアーディゾーニの「チム」に久々に再会したので、こちらも大好きなファージョンの「ジム」をアーディゾーニの挿絵で。ポッツ船長率いる「ゆり木馬号」の船員だったジム爺さんがミカン箱にすわってデリー少年に語り聞かせる心躍る冒険譚。「九番目の波」のタラ(鱈です)との友情、ジムの耳輪の由来がわかる「大海ヘビ」、最後の「ジムの誕生日」が好き。ジムの役どころはマーティン・ピピンだが冒険が具体的で親しみやすい。ファージョンの訳文というと石井桃子氏が頭に浮かぶが松岡さんの訳も読んでも聞いても心地よい。2021/10/02
きゅー
12
町かどのミカン箱には老人のジムがいつも座っている。近くに住んでいる8歳のデリーは、かつて船乗りだったジムの話を聞くのが大好きだ。今の時代で言うホームレスが語る昔話(しかもホラ話)を少年が楽しみにしているというのだから隔世の感は否めない。少年ジムはゆり木馬号に乗り込み、ナマズの女王に会い、ペンギンに助けられ、大海ヘビをなでさする。現実ではすでに老いたジムだが、思い出の中で彼は若く蘇る。おそらくデリーと同じくらいの年齢だろう。さらに、読者も彼らの年齢と近い。物語と読者の視線が交錯し、そこに世界が生まれる。2018/02/21
Kira
8
『ムギと王さま』の作者によるファンタジー。町かどのポストのそばでいつもミカン箱に腰かけている八十歳になったジムと、八歳の少年デリーの友情に心うたれるラストがすばらしい。もと船乗りのジムが語る数々の冒険譚には、聞き手のデリーと共にこちらもワクワクする。作者のストーリーテリングもすぐれているが、それを的確に映した翻訳がすばらしい。訳者の松岡氏は個人的に最も尊敬する翻訳家。 2021/05/04
あむちむ
6
とってもよかった!どのお話も読みやすく、しかし軽すぎず楽しめるものばかり。なんと言ってもアーディゾーニの絵と、最後のまとめ方がスマートすぎる。すっかりファージョンさんの手の中で転がされてしまいました。「ムギと王様」で挫折した私ですが、こちらは大好きでした。単行本もありますが、こちら文庫の方が子どもっぽすぎず好みでした。2025/05/03
tegi
3
1934年発表だけれど、ジムの語る海のはなしは帆船の世界。『ロード・ジム』のジムがもし穏やかな船員人生を終えていたら..と妄想したりしつつ読んだ。奇想小説としても一級。2012/09/18
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