内容説明
「鬼才ガルシン」の名をあまねく世に知らしめた処女作「四日間」をはじめ、自らの狂気の体験を象徴美にまで高めた名作「赤い花」、静かなメルヘンタッチの「がま蛙とばらの花」など、文庫初収録の4篇を含む7篇を精選。〈狂疾〉という十字架を終生背負い続けた悲劇の作家が、「血の一滴一滴」によって書き綴った代表的短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
miho
8
精神病院に咲いてる紅い罌粟の花を悪の権化と思い込み孤独に戦う主人公の気持ちは、実はよくわかる気がする。何かしらに意味をつけることは、あまりうまくいってないときに、やりがちなことだ、思い込みなのだと意識してるかしてないかが狂気の分かれ目なのだろうか。 がま蛙とばらの花が、物悲しいメルヘンでいい。2020/06/01
yuzi
2
ツルゲーネフやトルストイも認めた、ロシアが生んだ鬼才・ガルシン!全7編。思い切りロシア文学してます。兎に角重い。22歳、戦争で貫通銃創つくって自宅療養中に書いた処女作『四日間』。33歳、自宅の四階から飛び降りた5日後に死んでしまい、20数編しか作品はない。そのうち3割は戦争絡みの物語。人間の悲しさ、業、美しさを感じる物語たちです。個人的には童話的な『がま蛙とばらの花』が好き。2009/12/10
ハルトライ
1
まあ、全体的に「もういかにもこの時代のロシアらしいな」と感じる部分は多い。ただ、ガルシンの場合は、他の作家よりも描写が執拗でなにかに取り憑かれているかのような感覚を覚えるところがあり、ここを指して鬼才と呼ばれたのかなと。ただ、今の時代になってしまうと、この狂気めいた部分も少し薄味に感じる。傑作とされている「赤い花」は辛うじて現在でも通じそうなものがあるものの……。2015/07/18
skellig@topsy-turvy
1
感想として適切な表現かわからないけど、なんかカッコいい小説集だった。戦争体験に基づいた処女作の「四日間」、狂気を描いた有名作「赤い花」、静かで美しい水彩画めいた「がま蛙とばらの花」など7篇。自己犠牲や救い、「悪」との闘いを核として独特の世界が広がっていた。2012/09/18
naoyao
0
読んでいて、どうしてこれが賞賛されたのだろうと思うくらい、よくわからないまま読んでいた。そして、読み終わって、そうかこれは「救い」を書いているのだと思った時、読んだことを喜んだ。これを読むこと、それこそが人に救いを与えてくれる。しかし、救われるためにはどうしても向きあわなければならないものが多くあるのだ。それは、重く、苦しく、人の目を背けさせる力を持つもつものだということを、私たちは実はもう知っている。2011/12/04