福武文庫<br> 嘘つき

福武文庫
嘘つき

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  • サイズ 文庫判/ページ数 229p/高さ 15X11cm
  • 商品コード 9784828831138
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

虚言癖のある男の妻に恋した主人公の千々に乱れる心の動きを克明に追った表題作「嘘つき」ほか、「五十男の日記」「モード・イーヴリン」の中篇3作を収録。登場人物の内面に〈視点〉を置くという画期的な手法で20世紀文学の扉を開いた、ヘンリー・ジェイムズの傑作心理小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

きりぱい

4
三作ともどれもが、どこか不明瞭で、何か疑わしく、困惑の妙味とでもいうような面白さ。「五十男の日記」は、昔、逃げ出してしまった恋は、もしかしたら自分の見当違いだったのか・・と曖昧さを残し、表題作は、嘘つきよりむしろ、それを暴こうとする者の独りよがりの心理的葛藤の方が嫌らしく見える。「モード・イーヴリン」は、巧妙な嘘なのか、全くの真実なのか、見方によっては美しいのかもしれないけれど、何ともいまわしく思えるひとつの親交の展開。信用ならざる語り手にしてもないにしても、疑問は残るばかりなのに引き込まれてしまう。2011/10/03

tona

2
思い込み故に手に入れられたはずの幸福を逃してしまう「五十男の日記」は書簡体形式を使った見事な心理描写がなされている。書名にもなっている「嘘つき」は、どうでもいいような嘘をつく男と彼を愛するばかりにその嘘に付き合い続けてしまう妻、そして彼女を愛していた画家の3人が心理戦とも言える会話が繰り広げる。いつ嘘がバレるのか、果たして彼らは嘘を告白するのかと思わずはらはらしてしまう作品。2013/10/10

HODGE

1
「嘘をつく」というある種の言語活動を行っている人物の肖像画は、どのように描かれるのか、そもそも「それ」を描くことは可能なのか、という魅力的な問題を、その絵を描いている画家の心理と、実際にその絵を見た当のモデル及び彼の妻の反応だけで描写する表題作が、まさに離れ業の言語芸術だった。青年画家が「ハンサムな」モデルの「どの嘘」に魅せられ、肖像画の「何に対して」モデルの妻が驚愕し、妻の反応を見た夫であるモデルが発した「けしからん奴だ」という言葉は本当は「誰に」向けられたものだったのか──それが多様な解釈を導き出す。2015/08/25

takeakisky

0
中篇三篇。五十男の日記。連れていかれるところは、うすうす予感するけれど、問題は、連れていかれ方。絶対主観の日記から、見事に描き出される五十男の心の襞。後悔と自分の判断は正しかったという二点を揺れる想い。注意しないと呼吸を忘れる。表題作、ライアンの几帳面ないけずぶりが、微笑ましくもあり、怖くもある。一皮剥いたら何が隠れているのかは、誰にも分からない。一人称と読者にずれを生じさせ、単純な共感を拒否するところは絶妙な距離感。モード・イーヴリン、これだけ読んだことあると思う。究極の奇妙さ。そして、不思議に美しい。2025/05/07

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