内容説明
比類なき反逆精神で既成芸術を否定し、アヴァンギャルドの旗手として活躍した、夭折の詩人・小説家アポリネールの傑作短篇集。現実と空想が奇妙に交錯し、不思議な味わいを醸し出す23篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
89
詩人として有名なアポリネールの幻想的な短編集。つまらないと思う作品はなくて、ユニークな発想ときらびやかな文体に惹きつけられた。「ケ・ヴロ・ヴェ?」は19歳の時に書いたとは思えない完成度の高さ。放浪のギター弾きが旅の途中に出会う人々を描いている。詩情と残酷さと哀愁が絶妙に混じりあった味わい深い短編。短い作品では「おしゃべりな回想」が良かった。下宿屋の一室でいろいろな人物と話をしている男の正体は……?意表をついた結末が心に残る作品。同時に孤独な人間の姿を浮かび上がらせる内容に心を打たれた。2018/05/27
rinakko
4
大好きです。異端と残酷美とを愛で尽くせるように、隅々まで堪能した一冊。「月の王」が読めて嬉しい…。他にとりわけ好きだったのは「ケ・ヴロ・ヴェ?」や「贋救世主アンフィオン」、短いものでは「詩人のナプキン」や「アムステルダムの船員」…など。2011/08/01
takeakisky
2
これもフランス短篇傑作選から。二冊の短篇集が見つからず、これを久しぶりに読む。コミカルな不気味さから、軽く深い共感へ跳んでみせる。軽く。この本だと、オノレ・シュブラック以降が私の好み。ドルムザン男爵の暗躍に、にやにやとし、月の王に抱腹絶倒、からのうっとりを愉しみ、後半は短篇としての完成度の高いものが続く。複雑な感興を呼び起こす秀作が並ぶ。しんみりするものもいい。異彩を放つジオコンダの犠牲者のしれっとした笑い。こうなると仕方がないので、異端教祖株式会社と虐殺された詩人を買い直す。2025/03/22
龍國竣/リュウゴク
1
短い作品が二十三篇収録されている。「異端教祖株式会社」「虐殺された詩人」に加え後期の作も。キリスト教への信仰、中には冒涜もあるが、とユダヤ人への興味が窺える。狂王ルートヴィヒも登場する。特異な発想による、異端で時に淫らな幻想の世界を詩情豊かに綴る。2013/03/02
723
1
月の王目当てに読んだ。へんなものがいろいろ出てきておもしろい。最後に飛んでいってしまうというのも幻想的ですてき。他に「ケ・ヴロ・ヴェ?」なんかも面白かった。アポリネールは詩しか読んだことがなかったので新たな発見でした。2012/11/10