内容説明
現代と古代の戦陣の陵を夢幻のうちに交錯させながら、呪術の鏡に現代の男と女を透視し、Eros―繚乱とさざめく新作品集。(艶めく眉が心を昏ます)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
278
表題作を含めて9つの短篇を収録。表題作「眉雨」は難解な小説。プロットはほとんどなく、全篇に"喩"が氾濫する。安部公房を"乾いたシュール"とするならば、こちらは"ウェットなシュール"とでも言おうか。篇中での注目作は、やはり川端康成文学賞受賞作の「中山坂」か。こちらはリアリズム小説であり、語られるのはありうべき日常なのだが、どこかデラシネ感が漂うのである。つまるところ、これら9篇の小説は思想も社会性も、その他諸々のものを配したところの中空に浮かぶ、いわば純然たる小説世界そのもである。まさにフローベールの⇒ 2017/12/28
龍國竣/リュウゴク
2
寝静まった後の音、におい。それらが意識を醒ます。特に音の描写は秀逸で、その極致が「叫女」だろう。また、1985年の6月と8月にそれぞれ書かれた表題作と「道なりに」の文章の緊張も凄まじい。川端賞を受賞した「中山坂」は、競馬と女と老人と要素が余さず含まれている。2013/09/26
利一
1
表題作は見ることの恐怖を描いているように思えた。見られることのそれでもなく、見るー見られるの関係のそれでもなく、見ることそのものの恐怖。時間をおいてから再読したい一冊。2013/08/18