感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
本の蟲
10
非常に長いタイトルだが本来は無題。芥川賞候補の表題作は、ハネネズミという空想上の動物の実験と絶滅を横書き、図表や写真入りのノンフィション風に描いたもの。他2編は通常の縦書きで、左面から読むと表題作。右面からなら他の短編を読み始めることができる珍しい綴じ方。表題作はハネネズミの死に向かっているとしか思えない生態を、遺伝子や細胞学の面から詳しく説明している。他2編も、医師にして東大講師の作者らしく、医療や手術についてリアルな描写で書かれたずしりと来る話。個体と種族全体の死について考えさせられる1冊。2020/09/02
peeping hole
8
こんなザ・異常論文小説が筒井康隆大江健三郎に絶賛され芥川賞候補までのぼりつめていたのを柴田元幸に教わるまで知らなかった。全然関係ない家族の写真を図像連打するところで爆笑してしまった。チープさを遠ざけようと周到な論文文体やりながらラストでゴジラみたいになってて、それもやや手垢ついてるけどアガる。理系のTwitter的な(落合陽一みたいに)「。」ではなく「.」が用いられてるのがすごくよかった。羽ネズミのアップがなきゃこの手の論文としておかしいのだけれど、遠目から撮られた写真の実在感がガチっぽくて本当に怖い。2021/03/17
めだいさる
5
学術誌のレポートの体で書かれた小説。 横書きで写真やグラフがあり、設定上非常に事務的な文体であるが、架空の生物ハネネズミを通して、生命の神秘や悲哀を描写した仕上がりとなっている。 読み物として普通に面白い上に、作者のテーマも伝わってきて、取っつきにくさは感じない。 高校時代図書室で偶然出会い「純文学ってこんなに自由なものなのか」と驚愕した思い出深い一冊だ。 芥川賞の選評を見る限り、推している選考委員が多く、もし受賞していたら話題になったんじゃないかと思わせる。2025/03/02
ホレイシア
4
論文形式で語られる、光を放つ幻の動物ハネネズミ。文章、かなりいけますぜ。2008/11/29
mEmO
3
ぼくらが「文学」とか「SF」とか言ってるものって、どういうジャンルなんだろうかなんてことを考えさせられますよね、こういうの読むと2011/12/07