目次
プロローグ 誤解だらけのデモクラシー理解
第1章 大いなる資質を具えた政治家とは―田中角栄だけが、唯一のデモクラシー政治家である理由
第2章 官僚は、どう操縦するのか―角栄は、彼らを「生きたコンピュータ」と評した
第3章 果たして金権政治は“悪”か―デモクラシーは膨大なコストをかけて購うもの
第4章 政治家の「徳」とは何か―「運命を下僕にする力」こそ為政者の要件
第5章 デモクラシーとは何か―果たして「国民主権」が守られているのか
第6章 暗黒裁判だったロッキード角栄裁判―江戸時代のままの日本人の法意識こそ問題
著者等紹介
小室直樹[コムロナオキ]
政治学者、経済学者。昭和7(1932)年、東京生まれ。京都大学理学部数学科卒業。大阪大学大学院経済学研究科、東京大学大学院法学政治学研究科修了。東京大学法学博士。この間、フルブライト留学生としてアメリカに留学し、ミシガン大学大学院でスーツ博士に計量経済学を学ぶ。マサチューセッツ工科大学大学院でサムエルソン博士からPh.D Economicsを授与さる。平成22(2010年)9月、死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マカロニ マカロン
11
個人の感想です:B。2010年に亡くなった政治・経済学者の書いた田中角栄元首相の再評価本。本作の狙いは「ロッキード角栄裁判を例に「近代法の原則」を説いたもの」とのことで、日本では裁判官と検事が一心同体、同一共同体に属していて、三権分立が確立していないことを強調していいる。「日本人が求めているのはデモクラシー裁判ではなく、遠山の金さんの「お裁き」なのである。」また、腐敗の摘発を盛んに行うと全体主義につながるという指摘は、今の中国の習近平氏のやり方を見ると妙に納得できる。2018/02/06
popcorn
10
私達国民は一部の役人(役人のすべてが悪いわけではないです)によって酷い目にあっているわけですが、役人の協力がなければ何もできません。そこで、役人の性質(「①既存の法律の上で動く。新たな意思決定は出来ない。②減点主義だから、責任は取りたくない。③入省年次が序列。人事に口出しは無用。④薄給で天下らなければ割に合わない(給与の後払いと思っている)。⑤権限拡大のためなら一所懸命。」)をしっかり理解した上で政治家を通じて動かすしかありません。無闇に政治家、官僚叩きをして溜飲を下げている場合ではないなと痛感しました。2013/12/09
Willie the Wildcat
10
「民主主義」、「議会政治」を改めて考えさせられた。国益を念頭においた国民の代表者による自由闊達な議論、国策決定と立法の実施。問題はその代表者たる政治家が”国益”を念頭においた議論、あるいは議員立法を行っているのかどうか。イザヤ・ベンダサン氏の「日本は空気が支配する国」とは非常に的を得た表現。国民も国益と事実に基づいた冷静な判断と”夢”を持って政治に参加すべきかな。かくいう私も反省。(汗)角栄氏の金権政治の善し悪しは別として、氏の政治実績とその行動力は学ぶべき点があると感じる。2011/12/30
九曜紋
9
再読本。2011年刊。1994年刊行の「田中角栄の遺言」の復刊。角栄の裁判についてはdue process of lawの観点から無罪となるべき、というのはそのとおりだと思う。しかし、角栄こそ日本の宰相の鑑と言わんばかりの賞賛ぶりはどうか?議員立法を多数通した豪腕は認めるが、金権政治と呼ばれる腐敗の温床、政治の堕落をも考えると、功罪半ばというところか。ところが著者によれば民主主義の本来的意味からすれば、金権政治すら是とされるべきもの、らしい。少々ついていけない読後感。2020/09/04
makio37
6
自分の勉強不足を痛感する。自由主義と民主主義の違いも分かっていなかったし、刑事裁判で裁かれるのが判事などと思ってもみなかった。現代のデモクラシー裁判を、遠山の金さんの延長線上に考えていた。恐ろしいのは、自分も含め絶対主権者である国民の多くが、未だにその自覚がなく、無知で「空気」に流され易い民であること。そして最悪なのは、実質的に国を動かしているのが「心の底では不況を歓迎する」役人たちであること。2012/10/27