内容説明
満州と朝鮮半島を一つの歴史地理的空間とみなす戦前の“満鮮史”がなぜ誕生し研究されたのか。帝国日本の大陸政策との関連を視野に入れ検討する。
目次
1 高句麗史帰属問題と満鮮史
2 近代日本の朝鮮・満州認識と日露戦争
3 日露戦争後の朝鮮・満州支配と満鮮史研究
4 日本の大陸政策と満鮮史
5 満州国と満鮮史
6 満鮮史と高句麗史研究
著者等紹介
井上直樹[イノウエナオキ]
1972年8月、兵庫県生まれ。2004年3月、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程史学専攻(東洋史)中退。京都府立大学文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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PRAGUE
2
「高句麗史はどこの国の歴史か」という問いかけから戦前の日本に存在した「満鮮史」という学問について話題が展開していく。確かに日本の朝鮮半島、さらには満州進出の中で形成された学問であることは確かだが、そこには既存の国家の領域で捉えることの難しい高句麗や渤海の歴史をつかむ上での可能性を秘めた視点であることも確かという指摘には首肯できる部分が多い。2018/08/31
Naoya Sugitani
1
あまり聞きなじみのない「満鮮史」という学問が戦前に存在していたという話。しかもそれが日本の大陸政策と密接に連関しながら、展開していたというもの。少し前に渤海の歴史が韓国と中国どちらに帰属するかで両国が激しい論争をかわしたという話があったが、日本も決して無関係ではなかった。こうした認識は戦後一気に忘却されていくが、帝国認識も含めて再度検討しなければならないだろう。ちなみに著者は朝鮮古代史の専門家。だからこそ、こうした視点を見出せたのかもしれない。2017/08/12
非実在の構想
0
満洲と朝鮮を併せた地域を領域とする満鮮史の消長についての本。日本の植民地経営との関わりが大きくてで興味深い。政治と学問の関係を考えさせられる。満鮮史を担った満鉄歴史調査部に白鳥庫吉や津田左右吉といった大学者が在籍していたのは驚いた。2014/10/06