内容説明
市場均衡、合理的期待、効率的市場仮説…これまで経済学が教えてきた考えでは、現実の市場は説明できない。『複雑な世界、単純な法則』などのベストセラーで、物理学の視点から人間社会を見事に読み解いてきた著者が、経済学の常識に鋭く切り込む!経済学は物理学でさらに強くなる!
目次
第1章 均衡は妄想である
第2章 驚異的な計算装置
第3章 その理論に科学的根拠はあるか
第4章 地震と株式市場
第5章 進化する人間のモデル
第6章 市場の生態学
第7章 効率性の落とし穴
第8章 テクノロジーは市場をどう変えるか
第9章 消え去りゆく幻影
第10章 経済危機は予測できるか?
著者等紹介
ブキャナン,マーク[ブキャナン,マーク] [Buchanan,Mark]
1961年クリーブランド生まれ。物理学で博士号を取得。『ネイチャー』、『ニューサイエンティスト』等の編集者を経て、現在フリーのサイエンスライター
熊谷玲美[クマガイレミ]
翻訳家。東京大学大学院理学系研究科修士課程修了
高安秀樹[タカヤスヒデキ]
1958年千葉県生まれ。東北大学大学院情報科学研究科教授を経て、現在ソニーCSLシニアリサーチャー、明治大学先端数理科学研究科客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
106
リーマンの本を読んで頭が回らなくなったと思ったのですが、こちらの本ははるかにわかりやすく簡単でした。あまり数式は出てこずに文章での説明がほとんどですが、経済学と物理学の法則との連関性をかなり克明に書かれています。私は最後の「経済危機は予測できるか」という章に期待したのですが、若干肩透かし的な感じでした。2016/04/25
壱萬参仟縁
37
2013年初出。経済学者の大半は、均衡という概念が深く身に染みているせいで、それ以外の視点で物事を見るのができなくなっている(19頁)。言いたいのは、経済学者が、経済思想を一般の人々に説明する場合に、科学における不正行為と同じことをしてきたということ(30頁)。著者は均衡ばかりではなく、地球大気や生態系から学んで、非均衡系の科学概念を経済学に採用することを提起している(31頁)。一考に値しよう。D・カーネマンによると、行動経済学は、心は実際には1つでなく2つあるという考え。2016/03/15
Francis
9
市場はロバート・ルーカスが「合理的期待仮設」で主張したように常に均衡状態に落ち着く、と言うことはなく、むしろ株価がランダムに乱高下するように不安定なのが当たり前であり、それは気象状態や地震の発生傾向などの物理現象に似ていると主張する。これは目から鱗だった。市場は不均衡であるとは今では地位の低いケインズ経済学の主張するところでもあり、この本の知見を取り入れればケインズ経済学の再生とさらなる発展、そして経済学全体の再生と発展に繋がりそう。経済学はまだまだ可能性のある面白い学問だと心から思えた。2016/07/02
roughfractus02
5
原題はForecast-What Physics,Meteorology,and the Natural Sciences Can Teach Us About Economicsであり、物理法則だけでなく気象学を含む自然科学による予測を指す。主流派の古典物理的効率市場仮説が市場の動きを説明しない点を批判する著者は市場を自然現象の近似と見なし、キャッシュフロー/金融商品/金融主体/金融市場の各集合体からなる階層の予測不能な振る舞いを検討する。背景には経済人からアルゴリズムに主体が代わるサイバー市場がある。2020/01/21
hidek
3
数学的美しさに魅了され、均衡と合理性を金科玉条に現実と乖離することも厭わない現代経済学。物理などの科学研究は、遥か昔にその段階を離れ、不均衡から生じるダイナミズムへの理解を深めることで、複雑な現実の解に向かっている。ネイチャーの元編集者である著者は、経済学も早くその段階に移行すべきであると提言する。経済活動は気象の変化とも通じる。常に均質な空に向かうのではなく、蝶の羽ばたきが別の場所で嵐を起こすような正のフィードバックも頻繁に起こる。また、人の行動には再帰性があり、経済は気象より複雑な物であるはずだ。2015/12/17
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