内容説明
17世紀のロンドンを舞台に繰り広げられた国家を揺るがす贋金事件。天才科学者はいかにして犯人を追いつめたのか?膨大な資料と綿密な調査をもとに、事件解決にいたる攻防をスリリングに描いた科学ノンフィクション。
目次
偉大なる自然哲学者
詐欺師の生い立ち
錬金術、狂気、情熱
新しい監事
前哨戦
ニュートンと贋金づくり
著者等紹介
レヴェンソン,トマス[レヴェンソン,トマス][Levenson,Thomas]
マサチューセッツ工科大学教授(サイエンス・ライティング)、サイエンス・ライター、ドキュメンタリー映画製作者
寺西のぶ子[テラニシノブコ]
翻訳家。成蹊大学経済学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
253
近代科学の父・ニュートンは、なんと”ロンドンの鬼平”だった! 引力(重力)を発見し世間的な大成功を収めた後、王立造幣局の監事として稀代の贋金づくりの犯人と対決。江戸時代の火付け盗賊改め方、さながらの大活躍だった。自然の摂理を解き明かす、と同じ手法で捜査、尋問…時には検察官として犯人を追い詰める。そのやり取りがリアルに面白かった。また、当時のイギリスの銀貨がどんどん海外に流出していた時代性も見事に表現され、迫力満点。”悪貨は良貨を駆逐する”とは、こんなことだったのか、と納得させられる名著だった。2020/11/28
ゲオルギオ・ハーン
24
科学者ではなく、造幣局監事ニュートンの活躍をまとめた一冊。当時のイングランドの造幣局監事は治安判事としての権限もあり、通貨関連の犯罪を取り締まる仕事もあった。当時は貨幣の偽造が盛んであり、犯罪者たちもずる賢い者たちがいた。本書でニュートンの宿敵となるチャロナーは捕まっても巧妙な戦略で裁判を展開する。それに対してニュートンは闘志を漲らせ、人脈と堅実な証拠固めで宿敵を追い詰めていく。当時の贋金作りの方法、業者たちのネットワークにも触れているので興味深い。2024/02/17
白皙
22
りんごと万有引力、天才科学者というのが彼のイメージでした。しかし、のちに造幣局監事となって贋金づくりを行う悪人を執拗に追い詰めるという一面もあったことについては、とても意外でした。二人の天才の邂逅。一人は玄関から、一人は裏口から出た、というカポーティの言葉が当てはまる実話です。2014/01/05
もえ
21
ニュートンといえば「万有引力の法則」を発見した天才科学者というイメージだったが、50歳過ぎて王立造幣局に赴任し「犯罪捜査官」という意外な顔があったことを初めて知った。本書で描かれる悪徳贋金職人チャロナーとニュートンとの攻防は、まるで推理小説を読んでいるかのような面白さだ。17世紀のイギリスは偽造通貨が横行しており、チャロナーは中でも凄腕の贋金職人で自分は絶対に捕まらないという自信もあった。そのチャロナーを追い詰めていくニュートンは、捜査官としても天才的な力を発揮する。ニュートンの人間的魅力が満載の一冊。2025/04/07
やまやま
19
ニュートンが造幣局長となった、というのは時々事典の説明で見かけていたが、これまでその意味を考えたことがなかった。偶然、須藤靖氏のエッセイで本書の紹介に触れ、稀代の科学者が贋金づくりを追いかける話を興味深く読んだ。錬金は化学的方法に依拠しようとすると成功せず、むしろ現実社会では物性はそのままで、市場の歪みを活用することでお金が増える。これは例えば金銀本位の交換率の差異や、現代であれば金融工学的手法に基づく投資ということになろう。ニュートンは造幣局のBPRを実現したのち、贋金づくりの証拠を丁寧に収集する。 2022/01/19