内容説明
追悼吉本隆明―吉本隆明は現代の親鸞である。
目次
1 吉本隆明の死(吉本さんとの縁;戦後の呼んだ奇蹟―吉本隆明は、これからの時代を拓く不可欠な存在として、現代の親鸞になった;吉本隆明の“ひきこもれ”;日常営む大衆の一人―私と吉本隆明さん;何があろうと一人で立つ―時代が呼んだ奇跡の思想家;現代の親鸞―大衆の救い、一人考える)
2 宿業の思想(吉本隆明の仕事・人間について;吉本隆明「存在倫理」をめぐって;造悪論のこと―吉本隆明「存在倫理」の理解に向けて;普遍悪の概念をめぐって―親鸞と吉本隆明)
3 自己表出・指示表出(関係論として読む―『言語にとって美とはなにか』をどう読むか;自己表出・指示表出、そしてイノセンスの表出;物象について;“意味の影の流れ”について;傷としての記憶)
著者等紹介
芹沢俊介[セリザワシュンスケ]
1942年東京生まれ。1965年上智大学経済学部卒業。文芸・教育・家族など幅広い分野の評論で活躍。現代の家族や学校の切実な課題、子どもたちの問題を独自の視点で捉えている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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酩酊石打刑
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吉本がオウム真理教の地下鉄サリン事件での無差別殺人に接したときに、親鸞が直面していた増悪論の問題を蘇らせた。そのときに、弥陀の本願に照らして「意図された悪」をなしたものを、親鸞が救いから除外したのかという疑問に捉えられた。そこから親鸞の思考を継続させ、悪とは行為ではなく、「意図」であるという新たな倫理の地平にいたったとの視点で、吉本の思想を読み解いていく。いささか吉本の死を契機に上梓された本であり、論考としての不徹底さは、著者自身も言っているように否めないが、十分に読み応えはある。2012/09/20