出版社内容情報
柳田国男・渋沢敬三の指導下に,生涯旅する人として,日本各地の民間伝承を克明に調査した著者(一九〇七―八一)が,文字を持つ人々の作る歴史から忘れ去られた日本人の暮しを掘り起し,「民話」を生み出し伝承する共同体の有様を愛情深く描きだす.「土佐源氏」「女の世間」等十三篇からなる宮本民俗学の代表作. (解説 網野善彦)
内容説明
昭和14年以来、日本全国をくまなく歩き、各地の民間伝承を克明に調査した著者(1907‐81)が、文化を築き支えてきた伝承者=老人達がどのような環境に生きてきたかを、古老たち自身の語るライフヒストリーをまじえて生き生きと描く。辺境の地で黙々と生きる日本人の存在を歴史の舞台にうかびあがらせた宮本民俗学の代表作。
目次
対馬にて
村の寄りあい
名倉談義
子供をさがす
女の世間
土佐源氏
土佐寺川夜話
梶田富五郎翁
私の祖父
世間師
文字をもつ伝承者
1 ~ 5件/全5件
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
401
宮本常一は初読。以前から読もう読もうとは思っていたのがようやく。最初はやはり本書だろう。歩く(旅する)民俗学者、宮本常一の原点がここにも見られると思うからである。出版されたのが1960年なので、調査行は'50年代後半か。わずか60数年前とは思えない日本各地の姿がここにある。とりわけ愛媛県と高知県の県境あたりはもはや秘境感さえただよう。病の道なるものまであったそうである。また、たしかに西と東では同じ日本とはいえ、様々にその様相を異にするようだ。「語り」の宮本民俗学は、おおよそこうしたものであったのか。2024/07/03
seacalf
153
民俗学に興味がなくても、するすると読みやすい。ばくろうやメシモライ、天狗の止まり木、男女の契りを賭けた歌合戦、狼の千匹連れ、1年に1度なんでも好きなことをしていい日。気になる事柄がふんだん。ほんの少し前の日本のことなのに、目を見張るような知らないことばかりでカルチャーショック。でもそれだけに実に面白かった。以前の村落は、驚嘆するくらい機能的なコミュニティが形成されていたんだなあと感心する。単純に現代と比較はできないけれど、仕事や生活や幸せのかたちについても考えさせられる、とても濃厚な一冊。おすすめです。 2016/08/25
カピバラKS
139
●司馬遼太郎「私の三冊」の一冊。主に江戸期から昭和30年頃までの西日本における村の暮らしを当事者インタビューで描く。●昔の村落の運営は、直接民主主義に基づき、皆対等な立場で様々な知識を持ち寄って熟議を凝らし、意見対立による禍根を未然に防いでいた。これは民主主義の本来のあり方を示唆する。令和の民主主義は、論破至上主義とSNS上の罵倒の連鎖から、著しい断絶を生んでいるが、民主主義自体を憂うのではなく、その劣化を憂わななければなるまい。●ところで「土佐源氏」の後家ハンターぶりは凄い。事実は小説よりも奇なり。2024/07/10
藤月はな(灯れ松明の火)
139
フィールドワークを主にする民俗学者の一人として挙げられていたのが宮本常一氏だった。在学中、この人の本を読まなかった私を叱りたい!農民、漁民、木挽などの地方の人々の生活がこれまでも豊かで優しく、面白いとは!下ネタ多めなのもまた、良し(笑)個人的に寡婦や孤立化する女性を助けるため、共同体に人生経験豊富な老女達を中心とした互助組織が暗黙理にあったという点が興味深かった。同時に今の福祉を適用するための規制と照らし合わせると、現在はなんて窮屈なのか。後、口承伝聞を中心とする人と文字を知っている人の話し方の違いに感嘆2018/06/29
mukimi
125
本屋でただ直感的に惹き寄せられた。生涯を旅して暮らした民俗学者による、テレビもスマホもない時代、日本の田舎町にひっそりと暮らした名もなき日本人の生活の聴き語り。盲目の物乞いから村落の知恵者まで。彼らにコスパやタイパの概念はない。性に関する話題が多いのが印象的だが卑猥さはなくて、新聞も土日もない生活での人間の生命力の野太さが瑞々しい。一介の小学校教師だった筆者が内から溢れ出す熱意と好奇心から文章を紡ぎ続け、柳田国男や渋沢敬三ら著名な民俗学者に認められ沢山の書物を残したということに勇気づけられる。2025/03/09