感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
27
室生犀星の詩は静かな喜びに満ち、深いかなしみをたたえている。彼は砂山に降る雨の音を、夕暮れ時の祈りの鐘の音を、うつらうつらと啼く雲雀の声を聴く。雪の匂いをかぎ、くろがねの扉を引っ掻き、なくしてしまった銀の時計を思い出して橋にもたれて泣いたりする。急行列車に乗るときちがひになり、君の手紙を食べてしまったと打ち明け、生きていることの悲しみでからだぢゆうを震わせている。白秋は犀星を「素朴で正直な、一本の野生の栗の木」と例え、新鮮で自由な生き生きとしたリズムに賛辞を送ったという。まさに星のように輝く詩たちである。2021/10/03
田中
0
温かさと冷たさの両方があった。孤独感の中で自然に対峙し、人と暮らし、自意識に向き合っていて凄く良かった。 好きだった詩↓ 「己の中に見ゆ」 我はくろがねの扉の前に佇めり 我はひねもす其扉を噛じれり 或は爪をもつて引掻き穴をあけんとせり くろがねの扉に血のごときもの垂れたり その響は聾するごとし 我は飽くことなくその扉を叩けり 動かざるものを動かさむとはせり 扉の奥に何物のあらんや 何者を得んとするや 我は恐らく生涯これを叩かんとす 叩き破らんとす 身をもつて耐へんとはせり2023/05/25
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