内容説明
近年のAIの発達により、言語学も変革を迫られている。これまで不可能だったことがAIによって着実に実現されていく。言語学の課題はAIによってすべて解決されてしまうのだろうか。本書は、認知文法の研究者である著者が、言語理論を繙きながらディープラーニング以降の理論言語学および語学教育の在り方について提言を行う。AI研究と言語研究の共進化を目指して。
目次
第1章 ターミネーターの出現
第2章 ディープラーニングのインパクト
第3章 大量に聞いて覚えると話せるようになる?
第4章 “常識”で壁を越える
第5章 勝敗は誰が決めるのか?
第6章 心の中のマトリョーシカ
第7章 経験がことばに命を吹き込む
第8章 意味は話者の中にある
第9章 意味を育む豊かな土壌
第10章 ベッドに合わせて足は切らない
第11章 話すために考える
第12章 外国語教育に別解を
著者等紹介
町田章[マチダアキラ]
1970年群馬県生まれ。青山学院大学大学院文学研究科英米文学専攻修了(修士(文学))、大阪大学大学院文学研究科文化表象論専攻博士後期課程単位取得退学。長野県短期大学准教授を経て、広島大学大学院人間社会科学研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
67
面白い。 AIにより言語学者は絶滅するのか。という問いかけから始まり、言語に関する興味深い話が続く。主に、認知言語学。いいかげん、あいまい、て大切なんだな、とディープラーニングの話を読むと思う。2024/01/08
buuupuuu
28
近年のAIは、生成文法が想定したプラトンの問題を解決してしまっているように見える。つまり生得的な知識を仮定せずとも、大量の事例に当たるだけで、文法に適った文を見分けることができる。これは生成文法よりも認知文法に親和的であると論じられる。後半では、ことばの意味には物事の「捉え方」や主観的な要素が含まれているということが述べられている。「捉え方」と独立に概念を構成して、それをことばと結びつけてもうまくいかない。それゆえ、AIによる言語学習においても「捉え方」というものを組み込む必要があると論じられている。2024/09/18
Nobu A
6
町田章著書初読。2ヶ月前に出版の新刊ホヤホヤ。近年飛躍的進化を遂げた機械翻訳に対して認知文法の視点から英語学習の意義を論考。躍進の理由でもあるディープラーニングの利点と盲点を挙げながら認知言語学の枠組みで英語学習の意義を捉え直している点はとても興味深い。また、実用志向から教養志向への回帰を推奨しているが、大勢の学習者はやはり英語学習は「道具」としてしか思っていないのが実情。大津由紀夫先生らが提唱する「英語学習は母語を客観視する唯一の機会」の方が説得力がある。だからこそ、翻訳は両言語に精通する必要がある。2023/11/13
林克也
6
言わんとすることは解る気はするが、言語学者の最後の絶叫なのかなあ、という気もする。 AIに翻訳を任せれば、英語(外国語)を学ぶ・身につける必要がない、という考え方は、「悪意をもったAIへの仕込み」の可能性を考慮すれば、恐ろしいことだと思った。「そんなもん、自分と違うことばを話す人が世界には大勢いる。そういうことを知るだけでも英語を学ぶ意味はあんねん。それだけで十分や」という、ベテランの英語教師の言葉。これには膝を打った。 とにかく、「言語の本質」の後に読んだが、いろいろ考えさせられる本だった。 2023/10/23
みーちん
4
本書は、ひつじ書房のウェブマガジン「未草」に連載された記事に加筆修正されたものです。自分はスキーマやメタファという概念に興味があるので一連の記事を初めて読んだ時はとてもワクワクしました(祝書籍化)。 改めて、本書は文章が読みやすく例えが的確なので内容を理解しやすいです。章ごとに引用の解説や補足説明があるのも○。特に印象に残ったのは第4章の「甘やかしてはダメ」⋯私達が強い心身を獲得するには適度なストレスが必要なように、あえてノイズ(不完全なデータ)を入れることで機械学習の精度が劇的に向上したという話です。2024/02/10
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