レイト・レッスンズ―14の事例から学ぶ予防原則

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  • サイズ A5判/ページ数 375p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784822805081
  • NDC分類 519
  • Cコード C0036

出版社内容情報

アスベスト、BSE、地球温暖化を始めとする、ヒトや環境に対する汚染災害として有名な14の事例を科学的、経済学的に徹底検証。欧州環境庁が環境を守り、持続可能な発展に必要な、歴史から引き出された遅ればせの12の教訓と予防原則をレポートする。

まえがき
謝辞

第1章■序
早期警告からの遅ればせの教訓:歴史から学ぶ取組み/予防原則とは何か/早い段階での予防原則の適用:ロンドン、1854/災害を見越す:科学と公共政策の統合/参照

第2章■漁業:資源の評価 
早期警告/19世紀の英国における漁業/1920年代から1942年のカリフォルニア産イワシ漁/ニューファンドランドのタラ/予防が明示的になる/生態系からのアプローチ/遅ればせの教訓/参照

第3章■放射線:早期警告・遅れて出る影響
X線/放射能と放射性物質/被曝管理に向けての初期の動き/戦後の転回:線量の正当化、最適化、限度設定/結論/参照

第4章■ベンゼン:米国と欧州の労働規準設定についての歴史的考察
早期警告/行動を起こすことと起こさないこと/考察/結論と将来のための教訓/参照

第5章■アスベスト:魔法の鉱物から悪魔の鉱物へ
はじめに/最初のアスベストの“早期警告”と反応/アスベストがんについての早期警告/中皮腫についての痛烈な早期警告/規制当局などが実施したこととしなかったこと/措置をとった場合ととらない場合の損失と利益/アスベストの教訓は何か?/参照

第6章■PCBと予85年のCLRTAP議定書とさらなる前進/遅ればせの教訓/参照

第11章■鉛の代替としてガソリンに入れられたMTBE
はじめに/ガソリン中の鉛/MTBEの事例/MTBEの利点/MTBEの悪影響/反応/現在の傾向/予防原則に関連する考察/結論/参照

第12章■予防原則と五大湖の化学汚染に関する早期警告
最初の重要な早期警告/その後とられた行動ととられなかった行動の時期とその内容/公共機関による対応の結果/費用と便益/結論と未来のための教訓/参照

第13章■トリブチルスズ(TBT)防汚剤:船、巻貝、そしてインポセックスの物語
はじめに/TBT問題の出現/アルカション湾/英国の湾と海岸水域/地球規模の汚染/小型船に対する規制の有効性/海上船舶の重大さ/全地球規模の使用停止に向けての進展/代替品についての問題/TBT物語から引き出される遅ればせの教訓/結論:予防か、それとも、後追いの行動か?/参照

第14章■成長促進剤としてのホルモン:予防原則かそれとも政治的リスクアセスメントか? 
はじめに/エストロゲン様物質の野生生物への悪影響/エストロゲン様成長促進剤使用によるヒト健康への影響の不確実性は何だったか/欧州委員会により適知識をも用いる
9)より広い社会的利益と社会的価値を考慮する
10)経済的政治的利益から規制の独立を保つ
11)調査と行動に対する制度的障害を特定し、減らす
12)分析による麻痺に陥らないようにする
予防のもつより広い意味/参照

第17章■結論 
早期警告からの遅ればせの教訓

監訳者のことば
執筆者紹介
翻訳者紹介
索引

監訳者のことば

 2005年9月初めにこの本を読者にお届けしようとしている。環境問題の対策に予防原則の適用を求める声は強いが、現実はなかなか進展せず規制の歩みはのろい。強い逆風すら吹いている現状である。他の先進国でも似た状況が起きているようだが、この本は欧州の環境庁がその遅い歩みを少しでも速めようとして出版した調査報告書である。事例研究として14の環境問題の歴史を概観し、新しい考え方も提案しているので、大学で講義している先生方にたいへん便利にお使いいただけると思う。
 日本ではミナマタ病、イタイイタイ病、カネミ油症などの多数の被害や、諫早湾干拓、長良川河口堰などの生態系破壊の例があり、国民的後悔というべき状況にある。欧米でもそのような過去の痛恨が今の環境問題を覆っているのだが、それらの事例研究を通して教訓を引き出し、予防原則に向けた力強い理論的バックボーンにしようとしている。これまで被害は常に小さく見積もられ、被害を救済し予防策をとろうとすると経済活動へのダメージばかりが声高に主張されてきた。その際に、科学的論争が国民、行政、政治家を翻弄してきた。ミナマタ病の原因を特定するのに、被害者の主張を否定するためにれを未来への配慮と訳した。ガソリン用添加物MTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)の事例研究を担当した執筆者はこのキーワードをとくに重視している。MTBEがそれ以前の鉛添加物に比べると害が少ないとして導入されたのに、ほとんど分解せず水には溶けやすいために地下水を広く汚染をしてしまい、大きな水道水源を放棄せざるをえない大都市まで現れたのである。こうした痛恨はフロンにも地球温暖化ガスにもあるのだから、われわれは「未来への配慮」を真剣に政策に反映させなければならないのである。
 そのほかに、この報告書の編集者たちが強調している新概念に“pros and cons”がある。ある選択肢に対する正当性と利益をprosと言い、そのリスクと損失をconsと言っている。従来のコスト・ベネフィット(費用便益)分析を広げて、pros and cons鑑定へという提案である。Proは賛成の意で、conは反対の意だから、これを日本語で「是」と「非」と翻訳することにした。簡潔すぎるきらいはあるかもしれない。本書でも断っているように従来の費用便益分析を良しとする人は少ないが、未来のための予防原則適用にあたってはプラスとマイナスの影響を幅広く、慎重に勘定することが欠かせないと、激流のような大きな流れの中でどういう効果があるのか? 激流に呑み込まれないためには、自分の行為の社会的インパクトを、その深さと広がりを問う形でもう一度自分に向ける必要があるだろう。
 科学・技術が進歩して、その影響を判断することが非常に複雑で判りにくくなってきている現在は、個別の知識だけが大切なのではなく、何をどう考える、どう行動するかが大切で、そのためには訓練といったものも必要のようだ。とくに研究や開発に携わっている人々には、自分が研究や開発している内容が社会的にどう適用されるのか、その影響は何かを考え発言することが求められている。われわれは、社会の一員であるとの自覚をもってこうした訓練を受け入れざるをえないだろう。そうしなければ、ますます複雑となる環境問題にも、社会問題にも、対処できないだろう。第16章の非常に含蓄ある論議に、翻訳しながら感銘を受けた。しかし、科学・技術の恩恵の中にいるということでは欧米国民と日本国民と同じ状況であるが、文化の違いはあるように思う。ここで提案されている12の教訓を生かす社会的文化的基盤を日本で見出すことができるか、日本が独特の文化的基盤にあるとすればどんなバリエーションが提

内容説明

「科学だけに頼っていては子孫の未来はない。科学者ではない人々の深い知恵と勇気ある行動が立ちあがってこなければならない」(監訳者のことばより)。アスベスト、BSE、地球温暖化…。歴史が警告する遅ればせの12の教訓と未来への配慮。

目次


漁業:資源の評価
放射線:早期警告・遅れて出る影響
ベンゼン:米国と欧州の労働規準設定についての歴史的考察
アスベスト:魔法の鉱物から悪魔の鉱物へ
PCBと予防原則
ハロカーボン、オゾン層、予防原則
DES物語:出生前曝露の長期的影響
成長促進剤としての抗生物質:常識への抵抗
二酸化硫黄:ヒトの肺の保護から遠い湖の回復まで
鉛の代替としてガソリンに入れられたMTBE
予防原則と五大湖の化学汚染に関する早期警告
トリブチルスズ(TBT)防汚剤:船、巻貝、そしてインポセックスの物語
成長促進剤としてのホルモン:予防原則かそれとも政治的リスクアセスメントか?
「狂牛病」1980年代から2000年にかけて:安全の強調がいかに予防を妨げたか
事例から学ぶ12の遅ればせの教訓

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

coolflat

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本書では放射線、ベンゼン、アスベスト、PCB、ハロカーボン、DSE、抗生物質、二酸化硫黄、MTBE、トリブチルスズ、成長ホルモンを紹介。欧米の公害の歴史を知る上で最も適した一冊だろう。 リスク:影響が分かっていて、確率も分かっていれば、回避(分かっているリスクを減らすためにとる行動)する。 不確実性:影響が分かっていて、確率が分かってなければ、予防的回避(潜在的被害を減らすためにとる行動)する。 無知:影響が分かっておらず、確率も分かっていなければ、予防(驚きを予測し、特定し、削減するためにとる行動)する2013/03/27

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