出版社内容情報
◎ルポライター 鎌田 慧さん 推薦!
家庭崩壊、蒸発、自殺、一家心中、さらに殺人。現代欲望社会の暗闇で、巨大なヤミ金融が貪欲に蠢いている。無惨な「金融被害」の実態を暴露し、被害者救済の流れをつくり出したこの調査報道は、果敢なジャーナリスト精神を示して、大いなる勇気を与えられる。
第1章 被害の実相
1 取り立て 財布の2000円も奪われ
2 狙い撃ち 破産は借金苦の始まり
3 賭場通い 「腎臓売ります」と念書
4 末端業者 「上納」ノルマに金縛り
5 家具リース 「破産なら引き渡しを」
第2章 多重債務者
1 由美子 (1) 茶髪男に写真を撮られ
2 由美子 (2)「返せ」の声、朝晩やまず
3 由美子 (3) 温かい救いの声を私も
4 幸 枝 (1) 幼子抱きしめ冬の海へ
5 幸 枝 (2) 恨めしい朝がすぐまた
6 幸 枝 (3) 弁護士からも見放され
7 幸 枝 (4) 母娘のささやかな充足
8 民 雄 (1) 利払いに看板張り行脚
9 民 雄 (2) 家族の絆に支えられて
第3章 業者の内幕
1 回 収 「わしら、徹底的ですよ」
2 組 織 「ノルマもきついですわ」
3 上 客 「女は麻痺してるんだ」
4 鉄 則 「摘発逃れに神経使うよ」
5 情 報 「名簿は業者をどんどん回る」
6 演 技 「俳優の比じゃねーぞ」
7 ま ひ 「遊ぶ金あったら返せや」
8 憎 悪 「トイチだけは許せん」
9 搾 取 「死んだら香典、常道よ」
10 強 奪 「貸してないやつも狙う」
3 体験談から 「ヤミ業者に手を出す前に」
あとがき
資 料
解説「ヤミ金融対策法」
ヤミ金融対策法の制定を求める意見書(日本弁護士連合会)
貸金業の規制等に関する法律の改正に関する意見書(日本弁護士連合会)
ヤミ金被害相談窓口一覧
はじめに
「ヤミ金融」が強い繁殖力で市民生活を広く急速に侵し始めたのは2002年のことだ。
西日本新聞はヤミ金融被害が社会問題化し始めたその年の11月から、シリーズ「ヤミ金融を追う」を手掛けてきた。
スタート時に、一抹の不安があった。
借りた物は返す――人が守るべき、これは最低限の道徳である。万人が異論なく認めるはずだ。それだけに、貸し手の非だけをあげつらい、借りた物を返し切れなくなった借り手を擁護するだけでいいのか。リストラや病気で働けず生活費に窮した借り手と、ギャンブルや浪費への欲望を抑え切れなかった借り手とを、同列にヤミ金被害者として扱うのはいかがなものか。
こうした煩悶を抱えながら連載は始まった。
ヤミ金業者は「借りた物は返す」の社会ルールを逆手にとる。これが返済を迫る際のよりどころであり、自らを勢いづける最大の武器でもある。
しかし、道徳はおろか法律も無視し、「借りた物」の数十倍、数百倍もの金を返させて、時には借り手を死に追いやることもある。その悪辣さを知るにつれ、当初の不安は吹き飛んだ。
借りた物を返せる相手かどうか、借り手を選別すべきは貸し手である。
ところが、化したことで、社会に警鐘を鳴らし、被害抑止にいくらかは貢献できたものと信じている。だが、ヤミ金融を根絶やしにするには、社会に強力な装置が必要だ。
警察は一般事件の処理に手いっぱいで、民事の側面を持つ金銭貸借トラブルの処理までは抱え込みたくないのが本音に違いない。だからといって、違法な貸し手の摘発がぬるく、被害の深刻さの認識が甘くていいはずはない。これまで警察の摘発に積極性が見られなかったのは、捜査を後押しする強力な法律が未整備であることも一因だったろう。
連載の中で、被害相談を受け付けるボランティア団体の電話番号を紹介すると、九州全域から一日に150件を超す電話が殺到したという。取り立てにおびえ、息を潜めて暮らしている人たちがいかに多いかを思い知らされた。
私たちのキャンペーン開始に歩調を合わせるかのように、日本弁護士連合会がヤミ金融撲滅に向けた新法制定を求める意見書を国に提出するなど、さまざまな動きが出始めた。世論の高まりとともに、2003年春以降、国会でもヤミ金融対策の会合が持たれるようになり、いわゆる「ヤミ金融対策法」の成立に至ったのは、ご存知の通りである。
警察のヤミ金融摘発も03年に
内容説明
家庭崩壊、蒸発、自殺、一家心中、さらに殺人。現代欲望社会の暗闇で、巨大なヤミ金融が貪欲に蠢いている。無惨な「金融被害」の実態を暴露し、被害者救済の流れをつくり出したこの調査報道は、果敢なジャーナリスト精神を示して、大いなる勇気を与えられる(ルポライター・鎌田慧)。
目次
第1章 被害の実相(取り立て―財布の2000円も奪われ;狙い撃ち―破産は借金苦の始まり ほか)
第2章 多重債務者(茶髪男に写真を撮られ;「返せ」の声、朝晩やまず ほか)
第3章 業者の内幕(回収―「わしら、徹底的ですよ」;組織―「ノルマもきついですわ」 ほか)
第4章 無限連鎖(中小貸金業者―審査落ち狙う裏の顔も;生き残り競争―大手も走る「強引回収」 ほか)
第5章 読者の便りから(警察から―「借金の内容、必ずメモを」;相談機関から―「一人で悩みを抱えないで」 ほか)