寺院消滅―失われる「地方」と「宗教」

電子版価格
¥1,760
  • 電書あり

寺院消滅―失われる「地方」と「宗教」

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 278p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784822279172
  • NDC分類 185
  • Cコード C0034

出版社内容情報

全国のお寺が危機に瀕している。地方の寺院ビジネスの現状を徹底ルポし地方創生のカギを探る。お寺やお墓は本当に不要なのか?

「坊主丸儲け」「寺は金持ち」というイメージは強いが、日本のお寺は、かつてないほどの危機に瀕している。菩提寺がなくなり、お墓もなくなってしまった――。こんな事態が現実になろうとしている。

中でも地方のお寺の事態は深刻だ。高齢化や過疎は檀家の減少につながり、寺の経営を直撃する問題となっている。寺では食べていけないことから、地方の寺では、住職の跡継ぎがいない。しかし、寺は地域住民の大切なお墓を管理しなければならないため、簡単に廃寺にしたり、寺を移転したりすることはできないのが現実だ。

一方、都会で働くビジネスパーソンにとって、お寺やお墓は遠い存在であり、お寺との付き合いは「面倒」で「お金がかかる」ばかり。できれば「自分の代からはもう、お寺とは付き合い合いたくない」と、葬儀は無宗教で行い、お墓もいらない、散骨で十分という人も増えている。

経営の危機に瀕するお寺と、お寺やお墓はもういらないと言う現代人。この問題の根底には、人々のお寺に対する不信感が横たわっている。僧侶は、宗教者としての役割を本当に果たしてきたのか。檀家や現代人が求める「宗教」のあり方に応えることができているのか。

地方崩壊の根底に横たわる寺の消滅問題について、日経ビジネスの記者が全国の寺や檀家を取材し、徹底的にルポ。芥川賞作家の玄侑宗久氏らのインタビューを交えてこの問題に迫る。

お寺やお墓、そして地域の縁を守ろうと必死で努力する僧侶たちの姿と、今だからこそ、仏教に「救い」を求めて集まる現代人の姿が見えてくる。

【1章】 地方から寺と墓が消える
島を去る住職、来る住職 ある在家出身僧侶の奮闘記…長崎県宇久島
地方と都市を彷徨う墓地 福沢諭吉のミイラと改葬…東京都ほか
世界遺産の恩恵はどこへ 限界集落の空き寺…島根県石見
もう住職はいらない 空き寺で起きる仏像盗難…福島県会津坂下
再建できない被災寺院 政教分離が復興を阻む…宮城県陸前高田
絶滅寸前の尼僧 尼寺に拾われて…長野県・京都府・愛知県ほか
〔賢人に聞く 1〕 宗教は「時代遅れ」でもいい 作家 玄侑宗久氏

【2章】 住職たちの挑戦
「ゆうパック」で遺骨を送る時代
火葬場で読経10分、増える「直送」
「本当に感動する葬儀をやりたい」
多摩ニュータウンにできた“民家”寺院
企業人が仏教界を立て直し
〔賢人に聞く 2〕 25年後に35%の宗教法人が消える 國學院大学 石井研士氏

【3章】 宗教崩壊の歴史を振り返る
寺は消えてもいいのか
鹿児島が迎えた寺院・僧侶の「完全消滅」
国家と宗教の争い
戦争に加担した日本仏教
農地改革に翻弄された寺
寺がサイドビジネスに手を出す理由
〔賢人に聞く 3〕 僧侶に「清貧さ」は必要か 全日本仏教会 戸松義晴氏

【4章】 仏教教団の調査報告
浄土宗 過疎地にある正住職寺院へのアンケート
曹洞宗 宗勢調査・檀信徒意識調査
浄土真宗本願寺派 宗勢調査
日蓮宗 宗勢調査
臨済宗妙心寺派 被兼務寺院調査

≪日本仏教史≫

【解説】 作家・元外務省主任分析官 佐藤優

内容説明

あなたの菩提寺がなくなる?人口減に伴って衰退する寺院経営の現状を、ビジネス誌記者が徹底ルポ。

目次

1章 地方から寺と墓が消える(島を去る住職、来る住職―ある在家出身僧侶の奮闘記 長崎県宇久島;地方と都市を彷徨う墓地―福沢諭吉のミイラと改葬 東京都ほか ほか)
2章 住職たちの挑戦(「ゆうパック」で遺骨を送る時代;火葬場で読経一〇分、増える「直送」 ほか)
3章 宗教崩壊の歴史を振り返る(寺は消えてもいいのか;鹿児島が迎えた寺院・僧侶の「完全消滅」 ほか)
4章 仏教教団の調査報告(浄土宗―過疎地にある正住職寺院へのアンケート;曹洞宗―宗勢調査・檀信徒意識調査 ほか)

著者等紹介

鵜飼秀徳[ウカイヒデノリ]
1974年、京都市右京区生まれ。成城大学卒業後、報知新聞社に入社。事件・政治担当記者を経て、日経ホーム出版社(現日経BP社)に中途入社。月刊誌「日経おとなのOFF」など多数のライフスタイル系雑誌を経験。2012年から「日経ビジネス」記者。これまで社会、政治、経済、宗教、文化など幅広い取材分野の経験を生かし、企画型の記事を多数執筆。近年は北方領土問題に関心を持ち、2012年と2013年には現地で取材を実施、発信している。正覚寺副住職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

この商品が入っている本棚

1 ~ 1件/全1件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ネギっ子gen

53
【将来的に、全国の7万7000カ寺のうち3割から4割が消滅する】人口減に伴って衰退する寺院経営の現状を全国の寺や檀家から取材し、地方の困窮寺院の声を伝える書。佐藤優の解説も収録。参考文献も。「坊主丸儲け」「寺は金持ち」というイメージは強いが、厳しい状況。中でも地方のお寺の事態は深刻。高齢化や過疎で檀家は減少し住職の跡継ぎもいないが、地域の墓を管理するため廃寺にもできない。一方、都会では、お寺やお墓は遠い存在。「お寺とは付き合い合いたくない」と、葬儀は無宗教で行い、墓もいらない、散骨で十分という人も――。⇒2023/05/23

HANA

51
地方の寺、主に過疎地の寺院のルポタージュ。地縁というものが消え失せようとしている現在、檀家と菩提寺という形の地縁に根差した寺院が無くなっていくのは世の趨勢かもしれない。とはいえ東京一極化による地方の疲弊は現代日本の宿痾みたいなもので、寺院の力だけでは何ともし難いものがあるのも事実。一つ葬儀が出る毎に檀家が一軒無くなるという過疎地の住職の言葉には愕然とするものがある。新しい方法を模索しようにも、今までの檀家を捨て置くわけにもいかず。答えの出ない問題だな。巻末の各宗派のデーターも更に危機感に拍車をかけている。2015/06/07

おかむら

43
お布施の額になんかモヤモヤしたので、そういえば私は寺や檀家やそもそも仏教ついて何も知らないなーと思って読んでみた。いわゆる坊主丸儲け的な内容ではなく、地方の人口減で寺の経営も成り立たなくなるみたいな内容。思ってたんと違うけどとても興味深いルポ。面白い! 東京と地方では寺との付き合い方がそもそも違うんだな。村の過疎化で無住寺激増とか、震災後の寺の状況とか、尼寺が無くなるとか、廃仏棄釈と農地解放とか、知らないことばかりでした。お布施の額もなるほど東京は飛び抜けて高いわけねー、と納得(してないけど了解)。2016/03/17

Miyoshi Hirotaka

40
仏教は長期的凋落と弱い回復を繰り返している。一向一揆のように自治と武力で武家に対抗していた頃が、ある意味最盛期。徳川時代には寺社奉行により統制され、寺請制度で守らたが、幕府の終焉に伴う神仏分離令により保護がなくなった。戦前、海外布教や戦争協力により小康を得たが、農地解放、政教分離、新宗教の勃興により壊滅的な打撃を受けた。今は、それに少子高齢化が加わった。地方の縮減により、25年後には今の1/3の寺院が消失する見通し。諸行無常、無常迅速。宗教といえども変化の例外ではない。融通無碍に変化することが生き残る道。2016/08/30

きいち

35
丁寧に取材された、一から、いや、ことによるとマイナスの状態から頑張る各地のお寺さんの話がとてもいい。人の死と悩みに向き合うための様々な手法。ゆうパックあり、感動のお葬式あり。ええんちゃうん、こういう人々がどこかで支えてくれてるのなら、あとは成行きに任せても。そんな気になってきた。◇だって正直、寺の経営が成り立たずご住職がおられずとも、信じる人さえいれば祈りの場は成り立つ、在家が代表役員すればいい。もちろん本職がおられたらそれはとても幸せなこと、だから在家のわれらは、真摯な支え手をこそ支えていきたいと思う。2016/06/25

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/9736040
  • ご注意事項