内容説明
最貧のアフリカ諸国では深刻な危機がなんと民主主義によって増幅されている。『最底辺の10億人』の著者がアフリカ大陸における驚くべき逆説を剔抉する。
目次
最底辺の国々の恐るべき逆説
第1部 現実の否定としてのデモクレイジー(選挙と暴力;民族間の権力闘争;煮えたぎる釜のなかで―紛争後調停)
第2部 現前する暴力と対峙せよ(銃―火に油を注ぐ武装;戦争―破壊の政治経済学;クーデター―誘導装置のないミサイル;破綻国家コートジボワール;国づくりの過程と条件;餌をもらうくらいなら死ぬほうがましか?;現実の変革のさなかで)
著者等紹介
コリアー,ポール[コリアー,ポール][Collier,Paul]
オックスフォード大学教授、同大アフリカ経済研究センター所長。歯に衣着せぬ提言で定評のある開発経済学の世界的権威。前著『最底辺の10億人』が世界的な評判を呼び、Lionel Gelber Prize等を受賞。研究テーマは、低所得国のガバナンス全般、デモクラシーの政治経済学、内戦の経済学、グローバリゼーションと貧困等。世界銀行の開発研究グループ・ディレクター、イギリス政府顧問などを歴任
甘糟智子[アマカストモコ]
東京生まれ。多摩美術大学卒業後、PR誌編集・ライターを経て現在、翻訳業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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にしがき
17
👍👍👍 最底辺の10億人が暮らす国々(主にアフリカ)でなぜ争いが尽きないのか、経済的に発展できないのか、を経済学者の著者が統計を駆使して検証する。著者の研究によれば、これらの国々は、構造的に政治的アカウンタビリティーと安全保障が得られない。国民国家になるには大きすぎ、国家には小さすぎるため。個々の事象に入りこみ過ぎず、統計で一般化されているので分かりやすい(詳しい研究内容は論文参照だが)。国民を生み出すこと、地域内での協力、域外(先進国)からの安全保障の提供など、提言も多い。2022/01/25
どんぐり
10
最底辺の10億人の国々が直面している構造上の問題は、民族国家として大き過ぎ、国家としては小さ過ぎることにある。アフリカだけでも約2000の民族・言語集団があり、もしもそれぞれがひとつずつ民族国家をつくったら、その領土も人口も小さ過ぎ、安全保障面において十分な規模の経済を獲得できない。これらの国々になぜ政治的暴力がはびこり、それを抑制するためになしうることはなにかを探る。アフリカの内戦問題を考える一冊にお奨め。2013/02/12
テキィ
8
統計から、選挙は、国民の所得が著しく低い国では、社会の安定性をさらに悪化させるトリガーになる。所得水準の閾値は一人当たり年間2700ドル、1日17ドル。 逆にこの閾値以上の国では民主主義が独裁制より安定的な発展に寄与するらしい。 科学はいつも見たくない現実をつきつけるなあ。 繰り返し読みたい。 ところで、この邦題は趣旨として正しい一面はあるが、著者の意図には反した表現なのでは。表紙も何なんだと怒り出したいレベル。 2013/07/20
しんかい32
6
文章は平易だが何段階もの理屈を積み重ねて結論に至るので結構しんどい本ではあった。一応最後まで目は通したが完全には追いきれず。ガンガン統計的分析と理屈で事象を切っていくスタイルには迫力がある。またいつか再読しよう2014/03/27
ふぇるけん
5
アフリカの政情にそれほど詳しくないので、読み進めるのに結構時間がかかった。最底辺の10億人の世界では、民主主義を導入すると却って社会の不安定化が広がり、内戦のリスクが高まってしまう。民衆にアカウンタビリティーがない社会で国家をどのように作っていくか、道のりは長そうだと思う一方、先進国と言われる国でも今の状態に至るまでに長い歴史を越えてきているのだ。国家と呼ばれるものの成り立ちとその難しさについて考えるきっかけになりました。2014/06/01