内容説明
私と節子は高原のサナトリウムで、死の影におびえながらも愛の生活を営んでいた。残された時間の中に、幸福の姿を見出そうとするように…。作者自身の体験をもとに、静謐な純愛の世界を描き出した作品。
著者等紹介
堀辰雄[ホリタツオ]
1904年、東京に生まれる。東京帝国大学国文科卒業。高校在学中に室生犀星、芥川龍之介と出会い、大学在学中にはプロレタリア文学の影響を受ける。自身が結核で療養所に入院した体験をもとに本作を記す。1953年5月28日、没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
5 よういち
104
高原のサナトリウムで療養する節子に付き添う私。残された短い時間の中で、お互いを気遣いながら二人の幸福を見つけようとする。◆物語に大きな展開ない。サナトリウムに入所したところから、死の影に怯える毎日だけが、ゆっくりと過ぎていく。節子の言動に揺れ動く私の心、私の目に映る節子、そして高原の風景。これらが美しい文体で描写されていく。◆やがて訪れる結末の輪郭は疑いもない形を見せているというのに、目の前の現実だけが夢か幻のように過ぎていく... 2020/01/13
優希
101
美しくて静謐な愛の物語でした。サナトリウムで生活する節子と節子に寄り添うように過ごす「私」。死の影に怯えながらも、残された日々を慈しむように愛を育んでいく姿が心に染み入ります。季節や風景、心情が丁寧に描かれていて、死にゆく者、残される者の切ない想いが伝わってくるようでした。直接的に「死」を描いていないのが何とも言えない余韻を残します。悲しさとは異なる言葉にできない感情がこみ上げてきました。2016/08/17
NAO
25
主人公の心の葛藤がよかった。最後のちっぽけな光の話は感動しました。私の光も広がっているかも!って思えたから。2013/07/19
KIMI
13
風立ちぬ、いざ生きえやも…この美しい一文にずっと憧れていた。古典的純文学を敬遠していたが、読書感想文用?!w表紙のアイドルが照れくさいけど💦紙面が見やすく、古い言葉や言い回しに注釈がついて読みやすい。サナトリウムで暮らすふたりの日々。「…皆がもう行き止まりだと思っているところから始まっているようなこの生の愉しさ…」ずっと可哀想な物語だと思っていたが、残された時間を大切に送るふたりだけの幸せ。静謐な愛も信州の自然もとてもとても美しかった。純愛!2023/08/20
双海(ふたみ)
12
小学生のころに新潮文庫版で読んで以来の再読。今度は違う出版社を選んでみました。2014/08/02