出版社内容情報
古里の廐は遠く去つた 花が皆ひらいた月夜 港まで走りつゞけた私であつた 朧な月の光りと赤い放浪記よ 首にぐるぐる白い首巻きをまいて 汽船を恋ひした私だつた。-初刊のデザインの香りをつたえる新しい愛蔵版詩集。
内容説明
あゝ二十五の女心の痛みかな!初刊のデザインの香りをつたえる新しい愛蔵版詩集シリーズ。
著者等紹介
林芙美子[ハヤシフミコ]
明治36年(1903)生まれ。大正11年(1922)尾道高等女学校を卒業。大正13年(1924)8月、詩「女工の唄へる」を「文芸戦線」に発表。昭和3年(1928)「放浪記」を連載。昭和26年(1951)死去
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
駄目男
5
昔『放浪記』より先に『浮雲』を読んだ私は終盤に出て来るこの詩に痛く感動したものだった。懐かしき君よ。今は凋(しぼ)み果てたれど、かつては瑠璃の色、いと鮮やかなりしこの花、ありし日の君と過ごせし、楽しき思い出に似て、私の心に告げるよ。芙美子の才能は、あの放浪と貧困の中にあって、どのように養われてきたのか、殆ど、天賦の才があったというしかない。しかし『蒼馬を見たり』とは、また上手いタイトルを付けたものだ。今回、復刻版を手に入れたので読んでみた。初版は昭和四年六月十五日、貧しさならではの芙美子の詩だ。 2019/02/10