感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
42
ショーソンに霊感を与えたという『恋の凱歌』が目当てでしたが、併録の『父と子』が印象的。農奴解放前後のロシアの親と子、新旧世代の思想的相克を描いていますが、そんな時代背景を考えなくとも、若く自信に満ち、同時に様々な経験や思いに確立途上の自己を揺らがせる危うい青年たちと、彼らの若さを自分の時代が過ぎてゆく寂しさと期待を込めて見守る親たちとの相克にはとても胸を打たれます。そんな葛藤と友情、恋、親子の愛が絡み合った苦悩と陶酔に満ちたドラマが折り重なって迎えた最後の一文には静かな感動を覚えずにはいられませんでした。2018/05/29