内容説明
全共闘―各地の大学で1968年ごろに生まれた学生組織で、全学共闘会議の略。全国の主要大学の大半にあたる約160校で結成された。新左翼政治党派(セクト)だけでなく、ノンセクト・ラジカルと呼ばれた党派に属さない学生たちも参加し、バリケードストライキなどで学内課題やベトナム反戦などの政治課題について訴えた。69年1月の東大・安田講堂攻防戦は全共闘運動の象徴的事件になった。本書は2008年5月からの09年6月まで、産経新聞大阪朝刊、インターネットのMSN産経ニュースに掲載された記事を大幅に加筆したものである。過去を振り返る上で最も重要な登場人物の年齢、肩書はあえて取材当時のままとした。
目次
序章 “女王”の総括―重信房子インタビュー
第1章 隣の全共闘
第2章 バリケードの外から
第3章 全共闘を解剖する
第4章 キャンパスの過去と現在を結ぶ点と線
解説インタビュー―「いまあの時代を描く意味は何か」(漫画家・山本直樹さん)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
11
本書がユニークなのは、取材対象となっている全共闘世代の人々を、運動の元リーダーだけでなく、大学側や警察側、または右翼に至るまで網羅している点以上に、名もなき元闘士達やなんとなく流れに乗っかった人々の浅はかな言葉までも拾い上げているところだ。さらに、それを全共闘運動を直接は知らない30~40代の記者に取材担当させていることで、あの時代の虚飾が残酷なまでに暴かれていく。とはいえ、それは何も否定的な側面だけを抽出するのではない。(つづく)2010/06/15
yuji
10
学生運動とは何だったのかを知りたくて手に取ったが、結局よくわからなかった。本気で革命を起こしたいなら賛同する人は学生以外にいてもよさそうなので、なおのことよくわからない。内ゲバで自滅。当時学生運動に参加した人は流行りやファッションで参加したので語らないのは、恥ずかしくて語れないだけな気がする。2020/07/24
駄目男
9
団塊の世代は約800万人ほどらしいが、60年代後半の大学進学率は15%で今と違いかなり低い。ということは進学できる人は家庭環境が裕福だったとも言える。これらの人が所謂、全共闘世代だ。あの当時、安田講堂攻防戦などをテレビで見ていたが、これがどういう意味を持つのかさっぱり分からなかった。革命を叫んだ全共闘の人たちにはどんな大義があったのか。民衆が自然発生的に共産主義を熱望して官憲と闘っていたわけではないと思うが。あれから50年、社会の一構成員になった生活ぶりと現在の思想などを著者は訊いて本書に纏めている。2019/06/22
emi
5
産経新聞大阪朝刊、インターネットのMSN産経ニュースに掲載された記事を大幅に加筆したものであるせいか、取材側の感情の揺れなどのようなモノを感じ、散文的な印象が残る。あとがきを読み、取材側は私の同じ団塊ジュニアであることを知り、私がこの時代の本を手に取る理由を再認識したと同時に、取材ベースが冷徹な怒りなのかとも感じる。取材相手に感情移入が出来る点、出来ない点での記述の差も感じる。しかし、内容は読みやすいので全くこの時代を知らない人にはいいのかも。しかし、批判するならすれば良いのに、そこは敢えて(続く)2011/09/05
あきくま
5
「世界を変える」リアルでこの発言が出来た青春の総括。青春が美しいだけのものでないのはこの世代に限らないが、世間を巻き込み昭和史に残る大事件へと繋がった事実は、今も彼らの心に刺さる棘になっているようだ。「革命」が持つ諸々が人の心を強く掴むことがわかる。今だって私たちは誰かに世界を変えて欲しいと思っているんじゃないだろうか。その場の雰囲気に流された人って軽率だと思う半面、学生の頃ってそんな感じだったよなぁとも思え、一番印象に残った。2010/07/27