内容説明
核開発は国家のあり方をどう変えるのか。安全性神話を覆し災害の不可避性を説くとともに、民主主義と人権の蹂躙を告発する。ファシズムの抑圧を知る著者による未来への警鐘。
目次
序―硬直した道
放射線の餌食
賭ごと師たち
ホモ・アトミクス
おびえる人びと
原子力帝国主義
原子力テロリスト
監視される市民
展望―柔軟な道
著者等紹介
山口祐弘[ヤマグチマサヒロ]
1944年東京に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。Ph.D.哲学専攻。現在、東京理科大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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山口透析鉄
23
市の図書館本で読みました。 原著は40年以上前、スリーマイル島の事故以前に書かれた本ですが、高速増殖炉(これは破綻しています)や再処理工場(仏・ラアーグ)の諸問題等、今も通用する問題点が出てじていますね。 日本の六ヶ所村の惨状、終わっているSNSの原子力バカとかも、解っていそうなものですが。 核物質を取り扱うことによる警察国家・管理社会への危険性等も出て来ますし、シルクウッド事件(おそらく謀殺)はこの本にも出て来ていましたし、この本にはあまり出て来ませんが、放射性廃棄物の問題も、全く解決していないです。2023/04/06
ぽんくまそ
11
訳者によると著者はユダヤ人でナチ政権批判で亡命し、戦後は国際的な記者として名が知られたと。広島の被爆者とも会っている。この本のドイツ語原本が出たのが1977年だ。34年後フクシマを経験した我々にとっては予言書となった。原子力は統制国家への道だと作家の船戸与一が書いているのを読んだことがある。絶版だが読みかけだったバートラム・グロス「笑顔のファシズム」を読みたくなった。読みやすい文ではないが、じっくり読めば意味の通る文。この人は多くの人から話を聞く記者でありつつ本質は哲学者なのだろう。2023/03/02
かじやん0514
6
スリーマイルより前に出版された本の再刊。核テロ、際限なく拡大する国家機密など、この当時から明らかだったのだ。2017/12/29
Hiroki Nishizumi
4
原典は1977年の出版だが、このとき既に原子力は人知ではコントロール出来ない認識が共有されていたようだ。そして原発と原爆が同じ原理であることも。また、その怪物を扱うがために秘密主義や監視が広まることも。自分は原発推進派の思いがまったく理解出来ない。2017/03/29
Mealla0v0
2
核技術によって権力は新たな次元に位置付けられるようになった、とユンクは言う。「平和のための原子力」は、核技術の対象を軍事的敵対者だけではなく自国民へと拡大した。原子力施設を「完全に」守ろうとすれば、市民の生活全般に及ぶ監視や禁止が、安全性という観点から求められ、そのためには権力の強化が必要視され、絶対化されていく。権力の為の権力、なるほど、それは帝国主義のテーゼであるというわけだ。他方、そこでは、機械のように精巧で命令に忠実な「人間類型」=ホモ・アトノミクスが生産される。彼らは原子力帝国の奴隷なのだ、と。2017/05/30