内容説明
戦前、日本の植民地・占領地であった満州、中国本土、朝鮮、台湾の主要都市ではいずれも都市計画が実施された。なかでも新京=長春は近代日本の都市計画の理念と技術を全面的に適用した一大実験場であった。壮大なスケールの全容がいま甦る。混乱する現代の都市にとって新京の都市計画はどのような意味をもっているか。
目次
序章 新京と近代日本都市計画
1章 前史―長春の起源
2章 満鉄の都市経営と市街計画
3章 長春の市街地と都市成長
4章 満州国の首都計画
5章 国都建設計画事業1933―37年
6章 国都建設第2期事業と末期の百万都市計画
7章 新京の建築様式と建築の政治的表現
終章 新京と東京
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
残留農薬
1
高一以来の再読。思えば、これが僕が初めて触れた、満洲国について書かれたハードめの書籍であったかもしれない。やはり、戦後日本と違って戦前の日本(敗戦直後も含める)、「外地」、そして満洲国における都市計画は密だし効果を挙げていると思われる。それは、計画段階でまだ開発が進んでいなかった、政府が強権的に地上げを行えた、土地の所有関係が明瞭で区画整理の必要がなかった・簡単だった、という点もあるとは思うが、都市計画と建築行政の間の関係が戦後よりも密で、それゆえに景観が育まれた面もあると思った。2013/02/16
kyarafuki
0
東京の都市計画はなぜ上手くいかなかったのか,一方満州国新京ではなぜ緑あふれる美しい景観の都市を建設できたのか. 新京は計画段階ではあまり開発が進んでいなかったこともあるが,その計画を支える法制度や建築・行政にも恵まれていたのだなあ,と感じた. 水洗便所の普及のくだり等,細かなエピソードが面白かった.2017/04/04
waiwai
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東京の首都計画、遠く満州国新京での首都計画、両者は人的、物的につながりがあるとは驚きです。戦後七十周年の節目に本を読んで、侵略と建設という植民地の功罪を考える。2015/07/21
ponzu840w
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高速道路のICではなく満鉄の停車場という違いはあるものの、そこから始めてほぼゼロから都市を築くというのは日本内地の都市計画の例よりずっとCities: Skylinesっぽい。プレイヤー必見。 これ読んだ後にGoogleEarthで長春を眺めるとなお面白い2021/09/13