内容説明
本書は、日本の農業地域を小農複合経営という視点から分析した地域調査の成果を収録したものである。われわれは農業地域や農村の実態を分析する手法としてフィールドワークを重視した。第一に、現地における土地利用や景観の観察を注意深く行い、次いで、それらを構築し支えている経済活動や社会・文化活動の仕組みを住民や行政の聞き取り調査などから情報を収集し、さらに既存の統計や文献などを用いて明らかにした。結果として、小農複合経営は日本の農業地域を支える伝統的な仕組みであることともに、日本各地の諸環境に適応した仕組みであることが理解できた。しかし現代社会では、小農複合経営の伝統や有意性が薄れつつあり、そのことが食料生産力を低下させ、環境・景観保全機能を阻害し、地域社会を衰退させてきた。本書で明らかにされた小農複合経営の仕組みは、農家経営にとどまらず、地域資源としての人、土地、資本などの有効活用に適応できることを示唆している。
目次
1 総論
2 遠隔地・高冷地
3 首都圏(伝統農業)
4 首都圏(園芸・施設農業)
5 地方都市近郊
6 首都近郊
座談会「小農複合経営の現代的意義」
著者等紹介
山本正三[ヤマモトショウゾウ]
1928年静岡県生まれ。1951年東京文理科大学卒業。東京教育大学助教授を経て1975年から筑波大学教授。現在、筑波大学名誉教授。理学博士。専門は農業・農村地理学
田林明[タバヤシアキラ]
1948年富山県生まれ。東京教育大学大学院博士課程、東京教育大学理学部助手、筑波大学地球科学系助教授を経て、筑波大学生命環境系教授。理学博士。専門は農業・農村地理学、カナダ研究
菊地俊夫[キクチトシオ]
1955年栃木県生まれ。筑波大学大学院博士課程地球科学研究科修了。群馬大学教育学部助教授、東京都立大学理学研究科助教授を経て、首都大学東京大学院都市環境科学研究科教授。理学博士。専門は人文地理学、特に農業・農村地理学、オセアニア・ヨーロッパ研究、土地利用研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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