内容説明
組織事故とは、その影響が個人レベルにとどまらず組織全体あるいは社会に及ぶ事故のことである。組織内部に潜む欠陥が、知らず知らずのうちに拡大して発生したものである。大惨事の発生を事前にくいとめるには、事前にその兆候を突きとめ、是正するためのシステムをつくり上げなければならない。また、このようなシステムをうまく機能させるためには、まず組織内に安全文化を築き、浸透させることが必要となるのである。本書では、ヒューマンエラーの権威である著者が、このようなシステムの構築に向けた実践的ないくつかのアプローチを提供するとともに、安全文化をエンジニアリングする方法について解説している。
目次
第1章 潜在的な危険性、防護と損害
第2章 崩れゆく防御
第3章 危険な防護
第4章 人間の貢献
第5章 保守がシステムをだいなしにする
第6章 安全空間を航行する
第7章 エラーマネジメントのための実践的ガイドライン
第8章 規制者のつらい定め
第9章 安全文化をエンジニアリングする
第10章 安全管理に向けた多角的なアプローチの調和
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スターライト
5
事故を個人の過失などに求めるのではなく、その潜在的原因をシステムや技術に訴求して「組織事故」とし、安全文化をどう育んでいくかを考察した労作。事故や過失を個人に求め、その未熟さやキャラクターを非難することはたやすく、一時的には満足するかも知れないが、そこに至った原因が取り除かれない限り再び同様の事故が起こる可能性は高い。航空機事故や原発事故などを取り上げ、報告・正義・柔軟・学習を要素とした安全文化の構築の重要性がわかるものになっている。トライポッド・デルタをはじめとしたエラーマネジメント手法は参考になる。2020/09/20
とんずら
0
〇“論理がないものは偶然の出来事であるといわれている。しかし、逆は真であろうか?”のフレーズがお気に入り。事故発生の背景には基本原則がある。事故は起こるべくして起こるが、原則があるなら予防・対策はできるということか。〇仕事柄、役に立つかと思い購入したが非常に重い内容で読み進めるのになかなか苦労した。本書の全てを理解することはとてもじゃないけどできなかったので、今、理解できている範囲を少しずつ広げられるように努力して、2、3年後に再読したい。2015/09/06