出版社内容情報
民需への転換の手前で模索を続けた軍需産業の戦後史的意義を初めて本格的に跡づけるとともに、技術協力からバナナ貿易まで、アジアとの経済関係の再構築過程を包括的に実証。戦前からの人脈・企業の連続性や賠償・植民地問題もふまえ、戦後史の大きな物語が覆い隠した選択と挫折の積み重ねに新たな光を当てる、渾身の成果。
……非軍事化と脱植民地化という初期条件は戦後日本の出立にあたって決定的な影響を与えた。しかしその後の戦後日本が軍事化と無縁であったわけではなく、国内における防衛庁需要という新たな需要の台頭と、武器輸出先としての東南アジア市場開拓およびその挫折があった。また敗戦によって「帝国日本」は終焉を迎えたものの、帝国意識の名残りはさまざまな形で経済活動を規定することになったのである。(「序章」より抜粋)
【目次】
序 章 戦時から戦後へ
-- 脱植民地化・軍民転換の行方
第Ⅰ部 復興から軍需生産・経済成長へ
第1章 引揚げ科学技術者の動向
-- 満鉄中央試験所・水道技術者・鉄道技術者を中心に
はじめに
1 満鉄中央試験所の科学者
2 水道技術者 -- 日本水道コンサルタント
3 鉄道技術者 -- ナニワ工機
4 復興建設技術協会
おわりに
第2章 終戦直後の機械工業再建構想
-- 商工省・精密機械統制会を中心に
はじめに
1 「機械工業戦後経営に関する懇談会」の議論
2 中小機械工業の戦後再建構想
3 精密機械統制会の再建構想
4 商工技師・鈴木平の機械工業再建構想
5 商工省の機械工業再建構想
おわりに
第3章 ドッジデフレ下の企業経営
-- 新潟鉄工所の事例
はじめに
1 経営悪化の深刻化
2 1950年3月「緊急対策要綱」
3 その他の緊急対策
4 1950年上期における労働争議の推移
5 1950・51年度の経営推移 -- 朝鮮戦争の影響
おわりに
第4章 特需以後における経団連防衛生産委員会の模索
-- 日本技術協力会社の設立と南ベトナムへの技術者派遣
はじめに
1 南ベトナム派遣専門調査団の活動
2 日本技術協力会社の設立
3 サイゴン海軍工廠での活動
4 東洋精機事件
おわりに
第5章 ミサイル研究開発の開始
はじめに
1 ミサイル研究開発の発端
2 ミサイル技術開発・試作の展開
3 ミサイル生産各グループ・会社の動向
4 第3次防衛力整備計画下の SAM 開発
おわりに
第6章 航空機転換企業の戦後史
-- 1950年代の富士精密工業
はじめに
1 富士産業荻窪工場と浜松工場の生産動向
2 設立当初の富士精密工業とたま電気自動車
3 プリンス自動車工業合併後の富士精密工業
4 自動車生産の拡大
5 櫻井眞一郎の軌跡
おわりに
第7章 日本工営の南ベトナム進出
-- ダニム電源開発計画の帰趨
はじめに
1 日本工営の設立
2 ベトナム進出
内容説明
「高度成長」が覆い隠してきたもの。民需への転換の手前で模索を続けた軍需産業の戦後史的意義を初めて本格的に跡づけるとともに、技術協力からバナナ貿易まで、アジアとの経済関係の再構築過程を包括的に実証。戦前以来の人脈・企業や賠償問題もふまえ、見過ごされてきた選択と挫折の歴史に新たな光を当てる、渾身の成果。
目次
序章 戦時から戦後へ―脱植民地化・軍民転換の行方
第1部 復興から軍需生産・経済成長へ(引揚げ科学技術者の動向―満鉄中央試験所・水道技術者・鉄道技術者を中心に;終戦直後の機械工業再建構想―商工省・精密機械統制会を中心に;ドッジデフレ下の企業経営―新潟鉄工所の事例;特需以後における経団連防衛生産委員会の模索―日本技術協力会社の設立と南ベトナムへの技術者派遣;ミサイル研究開発の開始 ほか)
第2部 戦後日本と東アジアの経済関係(台湾での技術指導と機械輸出―駐台工業技術服務処における安富茂の活動;台湾バナナ輸入問題の推移;戦後台湾への直接投資と企業進出―1960年代における日台関係の一側面;通商断交からみた日韓関係―1950年代の日韓貿易の展開;韓国海苔輸入問題の推移―戦後から国交樹立期にかけての動向 ほか)
終章 多様な選択肢と「帝国」の名残り―戦後日本に向けられた問い
著者等紹介
沢井実[サワイミノル]
1953年生。現在、大阪大学名誉教授、住友史料館館長、博士(経済学)。主著『近代日本の研究開発体制』(名古屋大学出版会、2012年、日経・経済図書文化賞、企業家研究フォーラム賞)、『日本帝国圏鉄道史』(名古屋大学出版会、2023年、鉄道史学会住田奨励賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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