内容説明
近現代の特徴の一つとされる「世俗化」。しかし、人々はさまざまなかたちで信仰や霊性とともに生きている。では、西洋において神信仰はいかにして力を失い、個人の選択肢の一つとなったのか。壮大な歴史的展望のもとに宗教・思想・哲学の曲折に満ちた展開を描き出す記念碑的大著、ついに邦訳。
目次
第1部 改革の仕事(信仰の防波堤;規律訓練社会の出現;大いなる脱埋め込み;近代の社会的想像;観念論の亡霊)
第2部 転換点(摂理に基づく理神論;非人格的秩序)
第3部 ノヴァ・エフェクト(近代の不安;時間の暗い深淵;広がる不信仰の宇宙;一九世紀の軌跡)
著者等紹介
テイラー,チャールズ[テイラー,チャールズ] [Taylor,Charles]
1931年、カナダ生まれ。オックスフォード大学にて博士号(哲学)取得。マギル大学などで教鞭をとり、現在、同大学名誉教授。政治哲学をはじめ、自己論・道徳論・言語論・宗教論などの分野において研究を積み重ねてきた哲学者であり、テンプルトン賞、京都賞などを受賞
千葉眞[チバシン]
1949年生まれ。プリンストン神学大学にてPh.D.(政治倫理学)取得。国際基督教大学教養学部教授・特任教授を経て、同大学名誉教授、平和研究所顧問(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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てれまこし
6
自分が最も影響を受けたまだご存命の学者はたぶんこの人。やたらに分厚い本を書くのが好きでこれも漬け物石。世俗化を社会制度や外面的行為ではなく、1500年では不可能であった不信仰がどうやって2000年では一つの選択肢として受けいれられるようになったかという内面性の変化から捉える。「科学」や「理性」が不条理な恐怖や迷信を取り除いて信仰を不可能にしたという「引き算の物語」とは異なる物語が語られる。科学によって信仰を捨てた人は多くない。宗教内部の変化(新教だけでなく旧教の反宗教改革運動でも)が無神論への道を開いた。2024/05/19
デンプシー
1
(当然のことであるが、)神学の話が多く、またどのトピックも重厚で読むのがハードな本だった。特に下巻はテクストのみを追う部分もそこそこあって、勿体ない読み方をしてしまった。ただそれでも、宗教は社会や人間と密接に絡み合うこともあり、読んでいて勉強になったし面白かった。「世俗化した」と世間で言われる時、その定義は勿論のこと、理由としてもただ人々の合理化、科学の発展の結果などとあっさり説明されることが多い。しかし本書は長い歴史を紐解きながら世界観・人間観・時間観・社会などの変化を通じた多面的なアプローチを試みる。2022/12/23
有智 麻耶
1
西洋的教養の豊かさに驚かざるをえない。2021/08/20