内容説明
「民本主義」対「国家主義」の単純な枠組みに収まりきらない、近代社会科学最大のライバルの共通基盤と真の分水嶺はどこにあったのか。ドイツ経験などの見過ごされた契機も手掛かりに、近代日本政治の現実の焦点を捉え、デモクラシーと帝国をめぐる議論に新たな地平を拓く。
目次
序章 大正デモクラシーとドイツ政治論の競演
第1章 明治日本のドイツ的近代化
第2章 「獨逸學」との格闘―一八九八‐一九〇六年
第3章 洋行―一九〇六‐一九一四年
第4章 欧州大戦の論評―一九一四‐一九一八年
第5章 「大正グローバリゼーション」への対応―一九一八‐一九二六年
第6章 崩壊前の最期―一九二六‐一九三三年
第7章 終わりなき闘争―一九三三‐二〇一八年
終章 二つの権威主義の相克
著者等紹介
今野元[コンノハジメ]
1973年東京都に生まれる。1995年東京大学法学部卒業。2002年ベルリン大学第一哲学部歴史学科修了(Dr.phil.)。2005年東京大学大学院法学政治学研究科修了(博士(法学))。現在、愛知県立大学外国語学部・大学院国際文化研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
17
この二人の東京帝国大学教授については、立花隆の『天皇と東大』でも書かれていたような民本主義者(吉野作造)と国家主義者(上杉愼吉)の対峙という印象が強かったが、本書では明治日本のドイツ的近代化の視点も加味し、両名のドイツでの経験も紐解きながら、単純な二元論的な対立構図から脱し、より多角的に両名を比較する事で、近代日本が向き合ってきた「西洋的なもの」と「日本固有のもの」の相克が、今なお解消されていないという事までも提示している。西洋の影響力が弱まる中で台頭してくるものは?2019/07/09