内容説明
近世日朝関係のルートは朝鮮通信使にとどまらない。その外交を最前線でささえた京都五山僧の役割と実像を、訳官使の往来、釜山倭館との関係、漂流民送還や詩文絵画・産品のやりとりなど、広い視野でとらえて日朝外政システムの全体像を解明、東アジア国際秩序の理解を大きく書き換える。
目次
禅僧と「外交」の近世
第1部 朝鮮外交機構と以酊庵(以酊庵と輪番制;以酊庵輪番制考;二つの輪番制―対馬以酊庵と釜山倭館東向寺;十八世紀の輪番制廃止論議)
第2部 訳官使と朝鮮通信使(訳官使考;訳官使の接待空間;朝鮮通信使と以酊庵輪番僧;朝鮮通信使延聘交渉と梅荘顕常)
第3部 漂流と漂流記(東アジア海域の漂流民送還体制;江戸時代日本に残された漂流記;薩摩船の朝鮮漂流記)
第4部 モノと言葉(江戸時代における日本人と朝鮮人の対話;梅荘顕常と朝鮮;十八世紀対馬における日朝交流―享保十九年訳管官吏の事例;日朝間の贈物・誂物)
日朝外交史上の江戸時代
著者等紹介
池内敏[イケウチサトシ]
1958年愛媛県に生まれる。1982年京都大学文学部卒業。1991年京都大学大学院文学研究科博士後期課程中退。現在、名古屋大学大学院文学研究科教授、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きさらぎ
9
日本と朝鮮との外交において重要な役割を果たしていたのは対馬の宗氏だが、幕府から学問奨励の「碩学料米」を受けて京都五山の「碩学」達は、幕府の命を受けて対馬以酊庵に任期付で赴任し、対馬藩が作成する和文の外交文書の漢文への翻訳、逆に朝鮮からの文書の「漢文和訳」に携わった。本書はこの「以酊庵輪番制」の成立経緯、彼らの仕事ぶりや日常、幕府や対馬の思惑、朝鮮との交流の実像や贈答品についてなどを「細かい実証を積み重ねることで」描き出そうとする。記述はやや煩瑣だが、その分実像を思い描けて楽しい。漂流民の話も興味深かった。2019/07/04